今から数年前、日本でダイオキシンが大ブームになりました。これは不謹慎な言い方ですかね。いまは、あまり騒がれていませんけど、決してなくなったわけではないです。きちんと取り組みがなされて、落ち着いてきたのか、それとも飽きてしまったのか…。
前回に引き続き、ダイオキシンの話です。


ダイオキシンの数
世間でダイオキシンと呼ばれているのは、ダイオキシン系、ジベンゾフラン系、PCB系の3種類の化合物をまとめて呼んでいます。これら3種の毒性や構造が似ているからです。では、それぞれがどのくらいの数があるかというと、ダイオキシン系が75種類、ジベンゾフラン系が135種類、PCB系は209種類にもなります。
しかし、これらすべての物質に毒性があるわけではなく、毒性が認められているのが、ダイオキシン系で7種類、ジベンゾフラン系で10種類、PCB系では13種類になります。つまり、ダイオキシン類で毒性があり問題となるのが30種類の物質なのです。


表1.ダイオキシン類の数
ダイオキシン類の種類  化合物の数  左記の内有毒なもの
ダイオキシン系化合物 75
ジベンゾフラン系化合物 135 10
PCB系化合物 209 13


この中で最も毒性が高いのが、テトラクロロジベンゾパラジオキシン、2,3,7,8−TCDDと呼ばれるダイオキシンです。このダイオキシンが現在のところ最強の人工毒になります。




図  2,3,7,8−TCDD
化学的に安定。酸やアルカリに影響されない 光・特に紫外線により少しずつ分解される 分解温度は700℃以上 揮発性は低いが、大気中を長距離移動する 水や有機溶媒に溶けにくいが、脂溶性が高く、体内に蓄積・濃縮しやすい 土壌への吸着性が高い


最強毒なれど…
 急性毒性が0.6×10−3mg/kgという量は、一人あたりの致死量が0.04mgです。すると1億2千万人が住む日本では、約5kgあれば全滅することになります。なんとも恐ろしいことですが痛、皮膚炎、発がん性、体重減少、肝臓代謝の異常、心筋障害、生殖異常、性ホルモンや甲状腺ホルモン代謝への影響があげられます。これらは、人間に対して、直接実験するわけにはいきませんので、ベトナム戦争後の退役軍人の追跡調査や、イタリア・セベソでのダイオキシン飛散事故の後に行った調査、それから動物実験などによって得られた結論です。
 
  80年代にはパルプの漂白過程で使った塩素系漂白剤により、ダイオキシンが発生し、排水中に含まれていたなどの報告がされるようになりました。 そして、家庭や、ごみ焼却場から排出される煙にもダイオキシンが含まれていて、周辺の土地にダイオキシンが降り注ぐということで大問題になったのです。ごみ焼却施設では、すべてのごみを高温で完全に焼却する場合は問題なかったようですが、温度が300〜500℃などの低温になるとダイオキシンが発生しやすいということです。ちなみにダイオキシンを完全に分解するには1500℃程度の温度が必要です。 人間がダイオキシンを体に取り込む確率が一番高いのは、肉や魚などに蓄積されたものを食物として食べることです。ある県の一日の食事量からのダイオキシンの摂取量をあげておきます。表を見る限り、私たちは本当にわずかですが、ダイオキシンを摂取しているのです。  

表.ダイオキシンの摂取量

  野 菜 牛 乳  水
一日摂取量 79.93 85.15 216.88 47.05 165.08  2
ダイオキシン摂取量 0.138 0.347 0.100 0.046 0.213 0.0004

単位 1日摂取量:gまたはl/day ダイオキシン摂取量:pg/kg/day

(2002.6月記)


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