皆さんは風邪をひいていませんか?私は、寒むさが続くときに風邪になることは少なく、どちらかというと気温の寒暖についていけなかったり、夏のエアコンに負けてしまったりなどで風邪になることが多いです。あまりにひどくなったときは医者にいって薬ももらうのですが、風邪をひいただけでもたくさんの薬をよこされますよね。で、渡された薬をじっと見て、薬ってどうやって作っているんだろうと気になっていたので調べてみました。

1.新薬開発
 ある時、製薬会社の人と話す機会があったので、「薬を作る仕事って面白そうですね。」と尋ねたところ、意外にも「いや、もう既にあるスキ返ってきました。全合成のように0からスタートして全く新しいのを作るとなると別ですが、似たような薬を作るなら、反応させるものを一寸変えたりするだけでもいいのかなという気はします。もちろんこれは私の憶測ですので外れているかもしれませんが…。 さて、皆さんは一つの薬ができるまでどのくらいの費用や時間がかかるかご存知でしょうか。ここでは、医療用医薬品(処方箋などが必要な薬)の合成医薬品を中心に話を進めていきましょう。

まず、どのくらいの割合で薬が作ることができるのか。つまり、開発成功率はどのくらいな

表1.新医薬品の開発成功率(日本製薬工業会)
段  階 化合物数 次の段階に移行できる確確率 累積成功率
合成(抽出)化合物数 211,057   ―    ―
前臨床試験開始
決定数
453  1:466    ―
臨床試験開始数 259  1:1.7  1:815
承認申請数 122  1:2.1  1:1870
承認取得数 97  1:1.3  1:2176
のでしょうか。少々古いデータなのですが、日本国内の製薬会社で1986〜1990年の5年間に約21万種類の合成(抽出)化合物を用いて、臨床試験まで認められた薬は259、厚生省に承認され発売されたものは97種類だそうです(表参照)。つまり約2200分の1ということになります。1992〜96年の5年かでは、約3600分の1だそうです。 そして、新薬を作るためには10〜15年の年月を必要として、開発費用も100〜200億円もかかるという話です。 場合によっては、数億円の費用をかけたにも関わらず、製品化されることがなかったということがあるそうです。では、どのようにして、薬は開発され販売することができるのでしょうか。次に見てみましょう。







2.開発から製品の承認まで
表で薬が承認されるまでの流れを示します。

表2.新薬開発と承認審査までの期間(日本製薬工業協会資料一部改変)
  基礎研究2〜3年 新規物質の作成、物理化学的性質の研究 スクリーニング
             (新規物質で薬効のありそうなものを動物実験に使用し薬効や
              毒性を調べ、開発をするかどうかを決める。
    ↓
  前臨床研究3〜5年 動物を使って臨床前の試験を行う
    ↓           薬効薬理研究(どのくらいで効果が出るか)
    ↓            薬物動態研究(体内での吸収・分布・排泄などの確認)
    ↓           一般薬理研究(体内のいろいろな部位にどんな影響を与えるか)
    ↓            一般毒性研究(有害作用、強い毒性はないか)
    ↓            特殊毒性研究(発癌性、胎児への影響はないか)
    ↓
    ↓ →→ 治験届
    ↓
  臨床研究   第1相試験(ボランティア等による健康者による安全性の確認)
  G C P(*)  第2相試験(同意を得た少数の患者で安全・有効性確認
  3〜7年    第3相試験(同意を得た多数の患者で既存薬等と比較して安全・有効性確認)
    ↓ 
    ↓                         *GCP(Good Clinical Practice) 医薬品の臨床試験に関する
    ↓                          基準。人を対象とした試験について薬事法上の規制だけで
    ↓                          なく、科学的に適正かつ倫理的な試験を実施し、データの
    ↓                          信頼性を高めるための基準。
    ↓
  承認申請→→→ 中央薬事審議会 2〜3年
    ↓            ↓
    ↓    ←←←←承認・許可
 薬価基準収載
    ↓
   発売
    ↓
  市販後調査/再審査/再評価


ざっと眺めるとこのような流れで合成医療医薬品が作られています。臨床試験の第3相試験というのは、現在ある薬との比較をするのですが、もし既存薬なければ、全く作用のないものとの比較、いわゆるプラシーボ効果で薬効を確認するそうです。 医者からもらった薬にも10年以上の歴史があるのですね。
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