「…というわけで、田中正造は明治天皇に直訴を試みましたが失敗に終わりました…。しかし彼は、あきらめず云々…」と、国語の教科書で足尾銅山鉱毒事件の勉強をしたのは小学生の頃だったのか、中学生の頃だったのか…。しかし、今この話を考えてみると、国語の授業時間で、社会問題、環境問題などの勉強もしていたんだなという事に気づきました。

 さて、本題。今回は足尾鉱山の事件でその原因の一つだった銅(Cu)の話です。人類がCuを使い始めたのは4000年前、6000年前、8000年前からなどとさまざまな説が出ていますが、要はかなり昔から使われており、人類が最初に利用した金属がCuという事です。紀元前12世紀にあったトロヤ戦争でギリシア軍は「木馬の計」で勝利しますが、青銅器の武器を使っていたから勝利したともいわれています。青銅は、Cuとスズの合金で融点が700℃前後と低く、薪などの火でも簡単に加工する事ができます。その後もCuは遺跡から出る銅鐸、貨幣等さまざまなものに使われ、現在の私たちの生活にも欠く事のできないものとして利用されています。

 さて、Cuの名前ですがCu(cupper)の名前は、紀元前にCuをたくさん産出していたキプロス(Cypium)に由来しています。単体の性質としては、銀に次ぐ熱や電気の良導体として価格も安いために、電気関係の部品には必ず使われているのはご存知の通りです。また、乾燥した空気中では安定ですが、CO2や硫黄分がある湿った空気中では、徐々に緑青と呼ばれる塩基性塩を作ります。この緑青ができると表面が覆われ、内部のCuは反応する事なく保護されます。 また、人間の身体にとってCuは必須元素となっています。人体には体重60kgの人で約100〜150mgのCuを持っており、主に、肝臓、脳などに多く存在しています。普段の食事で約2.5〜5gを摂取しているといわれており、Cuの不足というのは起こりにくいのですが、不足すると貧血、毛髪の脱色、神経障害などの症状が現れます。Cuを含む食べ物としては、チョコレートやココアがあります。

(うちゅう1999年4月号より)


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