「軌道天文台」の動き ASTRO-E・NEAR
1999年末にもいくつかの「軌道天文台」についてご紹介しましたが、ここでも最近の動きをご紹介しておきます。

ASTRO-E(日本)

打ち上げ失敗の不幸な探査機は、何をめざしていたのか

日本の宇宙科学研究所(ISAS)が中心になって作られた大型のX線天体観測衛星です。ASTROは、宇宙科学研究所の天体観測衛星シリーズの名前で、Eは、その5号機という意味です。計画から見ると5年以上の歳月をかけて日本とアメリカの科学者により準備されてきました。

ASTRO-Eは、現在軌道上にある「あすか」や、アメリカのチャンドラ、ヨーロッパのXMMと共に、宇宙の果てで起こっている激しい天体活動をとらえることを期待されました。たとえば、宇宙空間には、一見何もないように見えるところに数1000万度という熱いガスがあることがわかっており、その正体をさぐる。あるいは、銀河中心のブラックホールがどのように「成長」するか? などを調べるために計画されたものです。

平成12年2月10日10時30分に鹿児島県内之浦からM−V(ミュー5)ロケットによって太平洋にむけ打ち上げられましたが、3段ロケットの1段目のノズル不調を調整できず、地球を半周程度まわったところで行方不明になってしまいました。おそらくは大気圏を突破できず燃え尽きたものとおもわれます。

M−Vロケットはいままでに3回中3回の打ち上げに成功しており、今回は初めての大きな失敗です。現在、その原因を探っている最中だそうですが、今後予定されている赤外線探査衛星や月探査衛星の計画にも影響が出ることでしょう。しかし、一時の足踏みはしかたないにせよ、失敗から学び、より信頼度が高いロケットを作り、宇宙の謎に挑みつづけてほしいと思います。

NEAR:Near Earth Asteroid Rendezvous (アメリカ)

小惑星エロスにランデブー。史上初の小惑星の人工衛星に

NEARは、地球に接近する小惑星を探査するために、1996年2月17日に打ち上げられた探査機です。そして、何回もの軌道修正を経て、000年2月14日に、小惑星433番エロスに接近し、史上初の「小惑星の人工衛星」になりました。

小惑星は現在までに5万個あまりが発見されており、その大多数は火星と木星の間をまわっています。しかし、中には火星の軌道の内側に入りこみ、地球に接近するものも発見されており、それは地球接近天体(NEO:Near Earth Object)と呼ばれています。小惑星エロスもそうしたNEOのひとつです。今回の探査では、地球に接近するという性質をいかして、本来火星より遠くにある小惑星を効率よく観測しようというプロジェクトです。

NEARには、レーザー高度計、X線・γ線による質量分析機、磁力計、赤外線分光器、多色ビデオカメラなどが搭載されています。これらの機器を使い、エロスの立体地図を作り、どんな物質でできているのかなど性質を詳しく調べる予定です。

小惑星は、太陽系の誕生期から変わらぬ姿をもっているものと、一旦惑星のように成長したものがバラバラになっているものがあると考えられています。特に、惑星がバラバラになったものは、直接見ることができない地球や火星の内部を調べる有力な手がかりになると考えられ、これからの成果がおおいに期待されます。

なお、NEARはジョンズ・ホプキンス大学を中心としたプロジェクトです。


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