6500光年彼方の超新星爆発

読売新聞の読者の質問に、科学館の学芸員が答えた内容を紹介します。

質問:
超新星爆発が6500光年かなたで起こったというが、このできごとは今起こっているのか?それとも6500年前に起こったのか?

回答: :6500年前に起きたものです

 最初に、光のかわりに音を考えましょう。音はだいたい秒速340メートルの速さで伝わ ります。遠くでビル工事のくい打ちをしている光景はときどき目にしますよね。そのとき、 ハンマーが落ちるのが見えてから、実際に音が聞こえるまでには少し時間がかかります。た とえば1キロメートル離れていたら3秒くらい遅れて聞こえるはずです。では、この音は聞 こえた瞬間に鳴ったかというとそうではありません。3秒前のハンマーが落ちた音が、やっ と伝わってきたわけです。同じことは落雷のときにも経験します。ピカっと光ってからゴロ ゴロと音が鳴るまでの時間は、雷の発生源が遠くにあればあるほど長くなります。

 音であれ光であれ、なにかの情報を伝えるためにはある程度の時間が必要なのです。光は 1秒間に地球を7回半(約30万キロメートル)まわれるくらいに速く進みますから、私たち の身の回りにおこるできごとは、起こった瞬間に見ることができます。ところが、宇宙のス ケールになるとそうはいかなくなるのです。

 6500光年かなたということは、光の速さで6500年かかる距離に位置しているとい うことです。6500光年先で超新星爆発が起こった場合、そのことを伝える光は延々6 500年の旅をして、初めて地球に情報をもたらします。つまり、私たちは6500年前に 起こった超新星爆発を、今やっと見ることができるのです。

 宇宙のスケールになると、ずっと前に起こったことがやっと見えるわけで、なんだかもど かしい感じを抱かれるかもしれませんが、いいこともあるのです。たとえば、性能のいい望 遠鏡で100億光年先の天体が観測できたとすると、それは100億年前の宇宙の姿を見て いることになります。さらに遠くの天体が観測できると、150億年前といわれる宇宙のは じまりの頃の様子が見えてくるわけです。国立天文台がハワイに建設した「すばる望遠鏡」 はまさに宇宙の果てを見て宇宙の歴史をさぐることをひとつの目標としています。

 夜空にかがやく星々はさまざまな距離にありますから、私たちの目に届く光が出発した時 刻もさまざまです。こう思って星を眺めていただくと宇宙の「奥行き」のようなものを感じ ていただけるでしょうか?

 ところで1光年は光が1年かけて進む距離、およそ10兆キロメートルです。「年」とつ いていますが、時間の単位ではなく距離の単位ですからお間違えなきよう…。

 

 


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