地球はなぜ自転するのか

読売新聞の読者の質問に、科学館の学芸員が答えた内容を紹介します。

質問:
地球はなぜ自転・公転をするのでしょうか?1秒の誤差なく 回り続ける原動力はなんですか?

回答:
   日常生活では、たとえばコマやタイヤを考えても、放って おくと回り続けることはありません。空気や地面とのまさつ によって回転の力が弱まってしまうからです。
   ところが、宇宙のスケールになると、運動をさまたげる要 因はほとんどないですから、動いているものは動きつづけ、 回るものは回りつづけることになります。
   さて、宇宙に目を向けてみますと、回っていないものを見 つけるほうが難しいくらいです。地球は自転していますし、 太陽の周りを公転しています。惑星もすべてそうです。月も 自転しながら地球の周りを公転しています。太陽も自転して います。太陽系を含む銀河系も回転しています。
  この問題を考えるときは「回転していないものが存在しな い」というより、「回転しているものだけが残っている」と 思ったほうが良さそうです。天体ができるとき、もとになる 物質がてんでばらばらに運動していては、いつまでたっても 天体にまで成長することができません。どこかへ飛んでいっ て終わりですね。ところが、物質がうずのように運動してい れば、中心にものを集めたり、近くにある物質と衝突して成 長したりすることが可能になります。太陽なり惑星もこのよ うなプロセスを経てできたきたものですから、いわば生まれ てきたあかしとして回転という性質を持っているのです。
  さて、この回転がいつも一定かというと、そうではありま せん。たとえば地球の自転は次第に遅くなっています。大昔 には1年間は400日以上あったことが、さんごの親類の化 石を調べると分かります。地球上では月の影響で潮の干満が 起きていますが、海水と海底のまさつによって地球が受ける 力は、地球の自転にブレーキをかけるほうに働くからです。
  現在では、地球の自転は時計としては使われていません。 かつては地球の自転をもとに1秒の長さを決めていましたが、 1956年からは地球の公転をもとに定義され、さらには1967年 にセシウム原子のエネルギーを基準とするものに置き換えら れました。つまり時は天体の運動とは無関係になってしまっ たのです。

 

 


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