銀河系とアンドロメダ銀河

重いのはどっち?


  私たちの銀河系とアンドロメダ銀河(M31)はともに渦巻銀河で、 局所銀河群という一つのグループに属しています。 銀河系とアンドロメダ銀河は「両雄並び立つ」といった感じで、 局所銀河群の中で大きさが際立っています。 これまでの観測からはアンドロメダ銀河の方が銀河系よりも若干大きくて重いと言われて いました。
  しかしながら今回、 イギリスの Evans と Wilkinson はアンドロメダ銀河の重さを量り直し、

銀河系の重さが  1.9×1012太陽質量(=太陽の約2兆個分の重さ)
アンドロメダ銀河が 1.2×1012太陽質量

と、銀河系の方がアンドロメダ銀河よりも重い、という結論に達しました。 これは今までの研究結果を覆す衝撃的なものです。


銀河の重さを量るには?


  銀河が載るような体重計はありません。そこで、銀河の周りを回る小天体 (衛星天体)の運動を調べます。銀河から遠いほど小天体はゆっくり動き、近いほど 速く動きます。また同じ距離にあるなら、銀河が重いほど速く動きます。これを利用して 銀河の重さを量るのです。今回はアンドロメダ銀河の周りを回る10個の衛星銀河、 17個の球状星団、それに9個の惑星状星雲の運動を調べて、 アンドロメダ銀河の重さを計算したのです。
  その結果、アンドロメダ銀河の方が軽い、という結論が出たのですが、 光っている星の数はアンドロメダ銀河の方が多い(すなわち明るい)のです。 つまり、銀河系はアンドロメダ銀河に比べて光っていない物質(暗黒物質)の割合が多 かったのです。実は銀河系やアンドロメダ銀河に限らず、 銀河は一般に暗黒物質が星などよりも多く、重さの大半を担っていることが分かっています。 重さがあるのに見えないことから「見失われた質量」 と呼ばれます。 この「見失われた質量」暗黒物質の正体はまだ文字どおり明らかにはされていません。
  このようにお隣にあるアンドロメダ銀河ですら重さを量るのはとても大変 で、不定性が大きいのですから、宇宙全体の重さを量るのはさらに想像を絶する難しさです。 宇宙全体の重さは宇宙がどのように生まれ、これからどのように変化していくか にかかわるとても重要な量です。 今後の研究が待たれます。

原論文: Monthly Notices of the Royal Astron. Society 316, 929-942 (2000)

※銀河についてはプラネタリウム「アープの世界」もご覧ください。


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