天文学の20世紀

20世紀天文10大ニュース

  もうすぐ20世紀が終わり、21世紀がやってきます。 20世紀は天文学にとってどのような世紀だったのでしょうか。 20世紀になされた重要な発見を独断と偏見で選んでみました(10大ニュースといいつつ 11項目あります)。
  1. 相対論的宇宙論(1920年ころ)
     宇宙がどのように誕生し進化してきたかについて精力的に研究されたのが20世紀でした。その基本となったのは、アインシュタインに提唱された一般相対性理論(1915年)です。一般相対性理論に基づいて理論的に宇宙の性質が調べられました。

  2. 膨張宇宙の確証(1929年)・・・ハッブルの法則
     アメリカの天文学者ハッブルは星雲を詳しく調べ、そのうちのいくつかが銀河系の外にある天体「銀河」であることを証明し、さらに、遠い銀河ほど我々から速く遠ざかっているように見えることを発見しました。これは宇宙が膨張していることを証明した重要な法則で、「ハッブルの法則」と呼ばれています。 相対論的宇宙論によって理論的に予想された宇宙膨張が観測的に確かめられたのです。20世紀の天文学は理論と観測がお互いにチェックし合って進歩した時代でした。

  3. 宇宙背景放射の発見(1965年)、宇宙ゆらぎの観測(COBE 1992年)
     膨張宇宙が正しいとすると、宇宙の初期には超高温・高密度の状態(原始火の玉状態=ビッグバン)であったはずで、その名残の熱が現在、宇宙電波として観測できることが予想されていました。 1965年、アンテナの開発をしていたペンジアスとウィルソンは偶然、ビッグバンのなごりである宇宙電波「宇宙背景放射」を発見しました。その功績でノーベル賞をもらっています。  また、現在の宇宙には星や銀河、銀河団といった構造があります。 こうした宇宙構造を作るためには宇宙初期に種が必要です。1992年、宇宙背景放射観測衛星COBEが宇宙電波を詳しく調べて宇宙構造の種となった「ゆらぎ(強さのムラムラ)」を確認しました。

  4. 核融合による太陽熱の説明(1938年)・・・ベーテ、ワイゼッカー
     太陽がなぜあんなに明るく熱く光っているのかについては19世紀から続く長く議論がありました。 この熱源が水素の核融合であることを発見したのが、ベーテ(アメリカ)とワイゼッカー(ドイツ)です。 この核融合の理論的背景には質量がエネルギーに換わる(E=mc2)という相対性理論の成果があります。

  5. クエーサーの発見(1961年)
     1960年代に、光では恒星のように点状にしか見えないのに、距離を測ると宇宙の果てに近い(ハッブルの法則で言えば光速に近い速度で遠ざかっているように見える)、すなわちとても狭い領域からものすごく膨大なエネルギーを放出している摩訶不思議な天体が発見されました。これがクエーサーです。現在では、超巨大ブラックホールに落ち込むガスの渦がその正体である、との説が有力です。さらに驚くべきことに、こうした超巨大ブラックホールは銀河系や近くの銀河の中心部にも見つかっていて、クエーサーと銀河の関係に天文学者の興味が集まっています。また遠方の宇宙、すなわち昔の宇宙を調べる手段としてクエーサーは非常に重要な天体です。

  6. 中性子星(パルサー)の発見(1967年)
     中性子星(パルサー)は超新星爆発により星が死んだ後に残る芯です。 スプーン1杯が数億トンもする超高密度の天体です。 中性子星は星の進化の研究から理論的に存在が予想されていましたが、発見されたのは1967年、 イギリス・ケンブリッジ大学の女子大学院生ジョスリン・ベルによってでした。 この発見に対しノーベル賞が与えられましたが、受賞したのはベルの指導教官であるヒューイッシュ教授だけで、ベルは受賞しませんでした。 このため、ノーベル賞はノー・ベル賞といわれました。

  7. 超新星1987A(1987年)
     近代天文観測の充実期において起きた超新星爆発でした。 世界中の観測機関がこの超新星爆発を観測・研究し、星の進化に関する研究論文が「爆発的」に発表されました。 また、日本の神岡にあるニュートリノ観測装置カミオカンデが超新星からのニュートリノを捕らえ、「ニュートリノ天文学」という新しい研究分野が鮮烈なデビューを果たしました。

  8. ハッブル宇宙望遠鏡の活躍(1990年〜)、惑星探査機の活躍
     20世紀後半には宇宙が宇宙から盛んに観測されました。それを象徴するのが、アメリカのハッブル宇宙望遠鏡であり、 ボイジャーやマーズパスファインダーなどの無人の惑星探査機です。 それらの活躍により、宇宙に関する理解が飛躍的に進みました。

  9. 冥王星の発見(1930年)、EKBOの発見(1992年)
     20世紀は太陽系の空間的な広がりに関する知識が拡大した時代です。1930年に太陽系最果ての惑星「冥王星」がトンボ−によって発見されました。1992年には冥王星の外側に小天体「エッジワース・カイパー・ベルト天体(EKBO)」が見つかりました。21世紀はさらに太陽系に関する理解が広がることでしょう。

  10. 太陽系外惑星の発見(1995年)
     宇宙には地球以外に生命のすむ星はないのだろうか?なぜ太陽系には地球という生命の星が存在するのだろうか?こうした疑問に答えるために太陽系以外の惑星探しが精力的に行なわれました。そして1995年、スイスの天文学者が初めて太陽系外の惑星を発見しました。現在では40個ほどの惑星が発見されていますが、いずれも地球とは似ても似つかない惑星でした。21世紀には地球型の惑星が発見されるのでしょうか。

  11. 番外:東洋初のプラネタリウムが大阪に設置(1937年)
     1937年に東洋初のプラネタリウムが大阪に設置されました。世界に誇る日本のプラネタリウム文化は大阪から始まったといえるでしょう。

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