生命の源は宇宙?

細胞膜は宇宙で作られたのか

  地球は生命に満ち溢れていますが、生命がどのようにして誕生したの かについては、まだわかっていません。
  今回、NASA宇宙化学研究所のSandford博士らは、宇宙空間における ごくありふれた環境の中で細胞膜のような構造が簡単にできることを実験で示しました。
  私たちの体は無数の細胞からできています。ヒトに限らず、地球生命 はすべて細胞という基本構造を持ちます。この細胞において重要なのは、遺伝情報を 伝えるDNA(もしくはRNA)と、外部−内部を区別する細胞膜です。細胞膜は、生命 活動そのものである一連の化学反応を保護していますので、生命は細胞膜という家 で暮らす住人と言えるでしょう。
  自らの遺伝情報を増やし、伝えていくという点で、生命にとって、DNA (RNA)は生命の根幹といえますが、DNAやRNAなどの巨大分子が裸のまま海の中で 誕生したとは考えにくく、そうした巨大分子を守るバリアとしての細胞膜が生命の誕生に は不可欠です。

  Sandford博士らはありふれた物質であるアンモニア、アルコール、 一酸化炭素を混まぜた氷に−263℃(絶対温度10K)の低温高真空下で紫外線を 当てる実験を行ないましたが、そのコオリを水に入れると直径10μmほどの 細胞膜に似た泡が生じたのです。
  水やアンモニア、アルコールも一酸化炭素も宇宙には日常的に ありますし、宇宙は低温真空状態で、太陽(星)からは紫外線がきています。
  地球には 宇宙から年間何百トンもの物質が降ってきています。生命が誕生した40億年ほどは もっと多くの物質が降ってきていたでしょう。その中に宇宙で作られた細胞膜のもとに なる物質が含まれていて、海に溶け込んだとき、RNAなどを守るバリアとなったのかも しれません。
  また、ありふれた環境で生命のもとが作られるのだとすると、宇宙 には地球以外にも生命に満ち溢れた世界が存在する可能性が高まります。

この実験の結果は"Proceedings of National Academy of Science, USA"で 発表されました。原文は http://web99.arc.nasa.gov/%7Eastrochm/vesicle.htmlを参照ください。

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