宇宙は今、何歳?

宇宙年齢に対する制限

  「宇宙は今いったい何歳なのか?」 この問いに答えるために 天文学者は多大な努力を行なってきましたが、宇宙年齢の推定には多くの 仮定がともなうため、推定年齢は100億年〜160億年とかなり幅広いものに なっています。
  今回アメリカのBeersらは銀河系でもっとも古い部類に入る 星を調べて、宇宙の年齢の下限値を出しました。
  星の光を調べると、いろいろな元素がどのような割合で その星に含まれているかが分かります。水素、ヘリウム、リチウム以外の 元素はすべて星の中で作られ、星の死とともに宇宙空間にばらまかれます。 そしてそれがまた次の世代の星の材料となり、さらに元素の量が増える・・・ (私たちの体や、身の回りの物質、ダイヤや金も幾世代かの 星の中から生まれた元素でできています)。
  宇宙が生まれて間もなく誕生した古い星の場合、こうした 元素の量がとても少ないはずです。
  今回Beersらは、金属量(水素、ヘリウム、 リチウム以外の元素)が太陽の10000分の1しかないような古い星を、ヨーロッパ 南天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)で観測し、驚くような発見をしました。 ウラン238(238U)のシグナル(線スペクトル)を捕らえたのです!!
  238Uは鉄や珪素などに比べると、もともと 宇宙には少ないので、星の光に含まれる線スペクトルはとても弱いものです。 普通の星では、他の物質のシグナルに埋もれてしまって見出せません。 しかしながら、Beersらが観測したのは金属量の少ない(つまり、元素の線スペクトルが弱い) 古い星だったので、幸いなことに238Uの線スペクトルを分離することが できたのです。
  この238Uから、星の年齢が推定されました。 238Uは半減期44億7千万年の放射性物質です。もともとあった はずの量が現在どのくらいに減っているかで、年代が分かります。 もともとあったはずの量は、他の元素の量から推定します(金属元素は 一世代前の星の中で同時に作られたものですから、他の金属元素の量から もともとの238Uの量がわかるのです)。 その理論値に比べて、観測された238Uの量は6%ほど少ないもの でした。原子核崩壊によって減ったのだとして、 この星の年齢は125億才と推定されたのです。 宇宙はこの星ができるより前に誕生していたはずですから、すくなくとも125億年よりも長い年齢を持つはず です。今後の、より精密なデータの解析が待たれます。

  なおこの結果は2月8日付けのNATURE(英国の権威ある科学雑誌) にて発表されました。

参考: ESOのプレスリリース

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