100億光年かなたの超新星

宇宙膨張は加速しているか

  ハッブル宇宙望遠鏡がこれまででもっとも遠い、 100億光年かなたの超新星を発見しました。 そしてその発見は宇宙の膨張が加速しているのか減速しているのかについて 重要な知見をもたらしたのです。
  宇宙は150億年ほど前、ビッグバンといわれる超高温・高密度の状態から始まり、 今日にいたるまでずっと膨張しています。 宇宙がこのまま膨張し続けるのか、それとも減速していつか収縮に転ずる のかは分かっていません。

  さて、ある種の超新星の場合、爆発の本来の明るさが分かっており、 それが実際にどのくらいの明るさで見えるかを測ることにより、距離がわかります。 遠くなるほど暗くなりますので(目の前の電球はまぶしくても遠い電球はまぶしくあ りませんね)、「暗いものほど遠くにある」ということになります。
  宇宙の場合、距離とともにどのように暗くなっていくかの度合いは、 膨張が減速しているのか、加速しているのかによって違います。
  減速している場合は、ある時間の間の宇宙膨張による距離の 広がり方がゆっくりなのですから、暗くなり方はゆっくりです。加速している場合 は同じ時間がたってもその間に距離が大きくなってしまいますから、それだけ暗くなり 方は大きくなるのです。
  これまでの観測では、距離とともに遠方の超新星がどのように 暗くなっていくかを調べて、宇宙膨張は現在加速している、という推定がされていました。
  ところが今回、もっとも遠い超新星の場合、その推定から予測 されるより明るかったのです!
  つまり、確かに現在は加速膨張かもしれないが、100億年前 には減速膨張であった、というのです。宇宙の年齢からすると比較的最近になって 減速膨張から加速膨張へと転じたことになります。これは宇宙空間に「見えないエネルギー (アインシュタインの宇宙項)」が存在する、という説を裏付けるものです。 100億光年かなたの超新星が「見えないエネルギー」に光をあてた、といったところでしょうか。
  もっとも、100億光年かなたの超新星の正確な観測はハッブル望遠鏡 をもってしても難しいので、 今後、より高性能の望遠鏡で遠方の超新星を多数観測して確かめる必要があります。

原文は英語ですが ハッブル望遠鏡のプレスリリースをご覧下さい。

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