宇宙一大きな虫眼鏡

重力レンズで銀河の材料の観測に成功!

   私たちの銀河系もふくめ、銀河がいつどのように形成されたのかは 大きな謎になっていますが、おそらく小さな星やガスの固まり(ブロック)が集まって巨大な銀河に なったのではないか、と考えられています。この銀河形成ブロックは銀河に比べればとても小さく暗く、 その上とても遠くにあるため、これまで観測は成功していませんでした。

  ところが今回、ケック望遠鏡+ハッブル宇宙望遠鏡の共同観測で、 なんとそのブロックが観測されたのです!
銀河団A2218とそれを通して観測された銀河形成ブロック
  カリフォルニア工科大学のリチャード・エリスらのグループはA2218と いう銀河団(赤方偏移z=0.18:距離20億光年)を 重力レンズとして用い、 赤方偏移z=5.58(宇宙年齢を140億年とすると、134億年前に相当、つまり134億 光年の距離にある)のブロックを発見したのです。

  重力レンズは質量を持つ物体が空間を曲げることで光の進路を変え、 あたかもレンズのような働きをします。重力レンズを通して観測すれば対象が大きく、明るく 見えます。言ってみれば宇宙一大きな虫眼鏡です。
  今回観測されたブロックの大きさは500光年、質量は数百万太陽質量、 それぞれ銀河系(天の川銀河)の200分の1、10万分の1に相当します。宇宙誕生から 数億年の間にこうしたブロックが多数集まって銀河が形成されていくのです。
   今後、より大きな高性能の宇宙望遠鏡NGST計画が実現されれば、銀河形成についての 理解がよりいっそう進むものと期待されます。

※原文は英語ですが、 ESAのプレスリリースもお読みください。
記:2001.10.11

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