しし座流星群観察ガイド 2001年版

 

しし座流星群をともかく見てみたい、という人のために、よくある質問の回答集です。一通り読むと初心者向けの観察ガイドになるようにしました。なお、もっと色々な流星の楽しみ方はありますが、それは最後の節を参考にしてください。

  • いつ見たらいいですか?(翌日や前日ではダメですか)
  • どこで見たらいいですか?(アメリカでも見えますか)
  • どっちを見たらいいですか?
  • どのくらい見えるのですか?
  • 見る時のコツは?
  • どんな道具が必要ですか?(望遠鏡はいりますか)
  • 写真やビデオで写したいのですが?
  • どこかで観望会をやってませんか?
  • 見方を教えにきてくれませんか?
  • 参考になる本はありませんか?
  • ほかに参考になるホームページはありませんか?

いつ見たらいいですか?(翌日や前日ではダメですか)

【お答え】2001年11月18日(日)深夜〜19日(月)未明がベストです

18日に限らず、24時より前では見えません(西日本の場合、東北日本では23時)しし座が地平線の下にあるためで、その方向からやってくる流れ星が地球にさえぎられてしまうからです。幸いなことに、何人かの天文学者は19日の日本時2〜3時すぎが一番見えるだろうと予測しています。これがあたれば、日本がベストポジションです。しかし絶対ではありません。予想一覧表をごらんください。
また、17/18日夜にもある程度の流れ星はみられるはずですし、19/20日夜もある程度の流れ星は見えると思われますが、その数は最高の条件の場所で見ても、1時間あたり10〜30個程度だと思われます。でも明るい流星が多いので、あきないかも。21(水)では見える可能性はほとんどありません。

このように、見える時間が限られているのは、流星が、地球と砂粒のような流星物質が衝突して起こる現象であり、その流星物質が集まっている所を地球が通過するのにかかる時間が短いからです。地球は秒速30km=時速10万kmという猛スピードで動いています。

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どこで見たらいいですか?(アメリカでも見えますか)

【お答え】近くに街灯がなく、見晴らしのいいところがいいです。南極周辺以外の世界中で見ることができます。

流星の明るさはふつうの星と同じくらいです。ですから、星がよく見える場所で、流星もよく見えるのです。天の川がよく見える見晴らしのいい高原や海岸がベストです。大都市からなら都心から100km、中・小都市なら30km程度離れると星がよく見える場所に行き着きます。その場合、すぐそばにむき出しの街灯やコンビニや自動販売機があると意味がありません。また場合によっては氷点下まで冷え込むので防寒対策などしっかり準備をして暗いところにでかけましょう。

なお、上の条件はしし座が地平線から昇らない南極周辺以外では、世界中どこでも同じです。中緯度なら見える時間帯も同じ(現地時で)です。ただ、同じ19日の未明でも時差があるために、もし天文学者の予想通り19日日本時2〜3時すぎだけが最高ならば、東アジア以外では見える数が少なくなると思われます。ただし、日本時間で19時ごろ、つまりアメリカの夜明け前ごろにもピークがあるという予測がありますので、北米・南米でもチャンスがあります。

3大都市圏ではよく見える場所がどこなのか見当がつきにくいかと思います。なかなか具体的な名前をあげるのは難しいのですが、例として以下の場所があげられます。ただし、実際に行く前に下見などの情報収集をしてください。それが難しいという方は自宅や親戚の家など、なじみのあるところからごらんになるのがいいでしょう。

首都圏
奥日光、房総半島の南端、奥秩父、富士山、伊豆諸島、八ヶ岳方面など
京阪神地区
紀伊半島南・中心部、氷ノ山方面、比良山、淡路島など
中京地区
中津川〜木曽・飛騨高山・紀伊半島南・中央部など
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どっちを見たらいいですか?

【お答え】どっちでもいいですが、あえていえば夜半は東の方。

流れ星は、どの方向にでも見られます。しし座流星群の場合もそれは同じです。ただ、しし座を中心に四方八方に見えるという特徴があります。 見方のコツでも触れますが、寝転がって見るのがいいでしょう。
なお、しし座が東から昇ってくるころは、東の空を見るとよいと思われます。 大まかな目安を下に表にしましたので参考にしてください。

時間帯 見る方向 スタイル
夜12時まで 観測できません 準備をしましょう
12時〜2時 東を中心に たったり座ったりして
2時〜朝 頭の真上を中心に 寝転がって
朝〜昼間 頭の真上から西より 明るい流星が見えるかも

なお、これは大阪などの西日本を基準にしたものです。北東日本ではこれより1時間くらい繰り上がりますのでご注意下さい。

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どのくらい見えるのですか?

【お答え】最高の条件の下で、1時間あたり数千個と予想されています

しし座流星群は、ふだんは1時間に数個程度の流れ星しかみえませんが、今年は1時間に数100個は期待できる、いやもっと見えるかもとされています。ただし、特によく見える時間は10分間〜2時間程度と予想されています。その時間帯に、しし座が昇っていなかったり昼間であれば、それほど観察はできないでしょう。何人かの天文学者は最もよく見える時間は日本時で2〜3時すぎと予想しています。この通りならば、空の条件がいいところで多数の流星が見られるはずです。なお、都会では上記の100分の1程度になります。街灯やネオン、大気汚染のために暗い流れ星が見えないためです。

参考までに、様々な天文学者の予想を示します。この予想はいずれも過去のデータなどから計算したものです。予想ですから、はずれることもあります

予想者

ピークの時刻

ピーク時流星数
(1時間あたり)
アッシャーとマックノート
Leonid meteors page
18:55 800
2:24 2000
3:13 8000
リーチネンとフランダーン
WGN, the Journal of IMO 29:4.
19:32 2000
3:00 2300
3:06 5100
リーチネンら
2001年8月発表の最新値
19:28 2000
3:03 2600
3:20 7000
ブラウンとクック 22時 1300
2時 500
ジェンスキンス
WGN, the Journal of IMO 29:5 (Oct. issue):
19:09 4200
2:08 1800
2:55 2700

時刻はいずれも日本中央標準時です。なお、ピーク時流星数は「理想的な条件の下」で「1時間流れ続けたら」です。天の川が見えるところで1ケタ大都会で3ケタ落として読むのが目安です。

参考文献(疑問のある方は下記をご参照ください)

月刊天文ガイド11月号別冊「号外!しし座流星群」
日本流星研究会(アマチュアの組織)のWEB
NASA 2001 Leonids
NASAのクック氏による予測のまとめ
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見る時のコツは?

【お答え】目を暗やみに慣らす。寝転がる。防寒など快適に。

目を暗闇にならしましょう。

人間の目は、明るいところから暗いところにいくとすぐには全開になりません。暗いところに出て、10〜20分間はのんびりと待つことが大切です。事前にサングラスをかけておくのも一つの手です。部屋からみるなら、部屋の灯りを消しましょう。
また、せっかくならした目を懐中電灯などにさらすとやはり見えなくなってしまいます。電球を赤いセロファンや布でおおってしまうのがコツです。

寝転がって見ましょう。

流れ星は空のどこに現れるかわかりません。ですから、空を広くみわたす=寝転がってみるのがベストです。そのさい保温性に優れ、石などがあたりにくい厚手のマットをしくと快適です。ホームセンターなどで1000円位で売られている厚さ1cmくらいのテントマットがいいと思います。
お金がある人は、勝手に空気が入る高級なマットが登山用品店などで売られています。ただし傷がつくとアウトなので、その下に安物のレジャーシートをしくといいでしょう。もっとぜいたくなのは布製の屋外用折り畳みベットだそうです。逆に安上がりなのは段ボールをしくことです。

防寒など快適に

長い時間、寝転がってみるのがいいと上に書きましたけれど、寒さでふるえてしまっては意味がありません。快適なときこそ人間は最高の性能を発揮しますので、寝袋に入ったり、毛布にくるまったり、つま先に貼るカイロに靴下を何枚も重ねるなど防寒に気をつかいましょう。
そのまま寝ても凍死しないような格好をします。マクラも便利です。のど元なども冷えますから襟巻を。ポットにあたたかいスープを入れておくのもいいですね。タオルなどを持っていると役にたちます。ただ、いくら寒いからといってお酒を飲むのは危険なので、大人でも絶対禁止です。

安全第一・マナーをまもって

うえにも書きましたが、眠さ、寒さなど危険があります。それを承知して万全の準備をしてください。また、駐車場などクルマがいきなり入ってくるところ、私有地や夜間は公開していない施設などに無断で入るのは絶対にやめましょう。また、仲間がいたら、おたがいにゆずりあい、気持ちよく観察することです。

万一のために

近くに「避難場所」を確保しておきましょう。家や近所で観察するのならば問題ありませんが、ちょっと遠征するなら、助けを求められる場所や暖まれるコンビニの場所などを確認しておくといいです。なによりも無理をしない。危険をおかさないのが第一です。
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どんな道具が必要ですか?(望遠鏡はいりますか)

【お答え】望遠鏡はいりません。懐中電灯、マット、防寒具、食料、筆記用具など

流れ星は、肉眼で簡単に見ることができます。望遠鏡は流れ星を見るのには向きません。それは、望遠鏡が狭い範囲を拡大し詳しく見るための道具だからです。

以下に、屋外で流れ星を見るのに便利な道具をあげていきます。家でみる場合には不要なものも多いですが、そのあたりは判断してください。

  1. 懐中電灯:暗闇で作業をするので懐中電灯は必要です。目にやさしい天体観察仕様(先を赤セロファンや赤い布でおおう)にしておきましょう。ヘッドランプのように首にかけておけるものが便利です。できれば小さなものと大きなものと両方用意します。大きなものは準備や片づけの時に使います。
  2. マット・防寒具・食料・寝袋・テント:見るためのコツの項目をみてください。カイロなどは冷たくなるとなかなか暖まりません。観察の前につけて人肌で暖めておきましょう。カロリーの高い食料も体を暖めます。もちろん暖かい飲み物もいいのですが、紅茶など利尿効果がある飲み物は飲まないでおく方がいいでしょう。テントは荷物をいれたり万一の避難場所。寝袋にくるまって観察すると便利で快適です。
  3. 筆記用具・時計:なんだかんだいって、あとで「何時何分ごろに見えた」とかいいたくなるもんです。時計と筆記用具(なくさないようにヒモを通しておく)を持っておくといいでしょう。なお、光る時計はまぶしすぎることが多いようです。
  4. その他:保険証・薬・お金など、遠くにいく場合はもっておいた方がいいです。
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写真やビデオで写したいのですが?

【お答え】写真は一眼レフカメラで写せます。ビデオは機種によります。

写真

次の道具を用意します。

  1. カメラ:シャッタースピードでB(バルブ)が選べ、レリーズが付けられるもの
  2. レンズ:出来るだけ明るいレンズ。標準レンズがよい(Fが2以上・ズーム は向かない)
  3. フィルム:高感度フィルム数本。感度(ISO)が800以上。できれば3200を。
  4. レリーズ:カメラにあったもの。オートストッパー付き。場合によってはリモコンケーブル
  5. 三脚:ビデオ用でもよい、ぐらぐらしない丈夫なもの
  6. フード:できれば。レンズにあっているもの。
  7. カイロ:ベンジンや桐灰を燃料として火を使うタイプ(使い捨てタイプは役にたちません)、空気が乾燥していればなくてもかまいません。
  8. 小物類:見やすい時計、粘着テープ、筆記用具(野帳がよい)、小型ライト(先を赤セロファンでおおう)、ライター、カメラ用の予備電池(あっというまに消耗します)

明るい場所での準備

  1. カイロに火をつけておきます
  2. フィルムをカメラにつめ、1・2コマ普通の風景を写します
  3. カメラのオートフォーカス(AF)機能を切ります。
  4. レンズのピントを無限大、しぼりを開放にし、レンズの可動部をテープで固定します。
  5. 固定できれば、カメラの露出時間もB(バルブ)でテープ固定します。
  6. レリーズを取り付け、はずす練習をします。取り扱い説明書をよくよんでください。
  7. カイロをレンズのわきにあてがい、テープや古いストッキングなどで固定します。レンズが結露するのを防ぎます。

撮影場所で

  1. 三脚を広げて地面にたてます。一番安定する長さにのばしましょう。
  2. カメラを三脚にとりつけます。ネジはしっかりとめてください。
  3. カメラにレリーズをとりつけます。

撮影

  1. 向ける方向はどちらでもかまいませんが、街灯などが直接入らないようにします。
  2. 露出時間は都会なら2〜3分間ぐらい、田舎でも10分間くらいでしょう。
  3. 記録をとりながら、次々に露出をします。
  4. 運がよければ、36枚どりフィルムで1〜3コマに流星がうつります。
  5. もし、しし座流星群が大出現したら、1コマにいくつもの流星が写るでしょう

ビデオ

家庭用のビデオカメラでも非常に明るい流星は写ります。写真と同じように三脚に載せてかまえましょう。オートフォーカスはOFFにしてピント無限大(遠くにあわせる)といいでしょう。でも人間の目よりビデオの方が感度が低いので、ほとんどの流星は写りません。

もし、あなたが持っているビデオカメラが、スローシャッターや光を蓄積する機能をもっていたら、ラッキーです! スローシャッター機能をONにしたり、光を蓄積するようにセットすると、写る流星の数はずっと増えます。

また、天体用の高感度のビデオも売られていますが、望遠鏡店などのありかがわからない方は挑戦しないほうがいいと思います。

さらに、イメージインテンシファイヤという機器を使えば、目で見えない流星まで撮影できます。いわゆる暗視ゴーグルにつかわれているものです(赤外線を使うものではありません)。これらは定価で50万円、ちょっと程度の悪い普及品でも10万円くらいします。特殊な機器ですので簡単には入手できません。放送局などでの映像はこうした機器を使っているということだけ知っておいてください。

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どこかで観望会をやってませんか?

【お答え】アストロアーツ社の Webページに観望会情報

がまとめられています。ただ、流星が流れない24時以前に「練習」をする会もありますので、主催者によく問い合わせて下さい。なお、しし座流星群を見るのには、特別な道具はなにもいりませんし、流れ星は見えたら誰にでもわかります。ぜひ、自宅などでごらんになることを おすすめします。

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見方を教えにきてくれませんか?

【お答え】:プラネタリウムや講座を利用されてはいかがですか?

しし座流星群の観察方法をちゃんと教えられる人は、日本全体で数千人くらい だと思います。そのほとんどの人は、忙しくててんてこ舞いをしているはずで、個々のご要望に応えることはできません。それよりも、プラネタリウムや各種の講座などで見方を紹介している場合があります。そうしたところにでかけられてはいかがでしょうか? プラネタリウムなどは休日でもやっていますよ。 科学館では、16、17、18日の3時の回は特別にプラネタリウムで「しし座流星群」をテーマにします。日本プラネタリウム協会のWEBでは関東地方の情報が掲載されています。

しし座流星群をテーマにしたプラネタリウムや講座の案内は、アストロアーツ社(星ナビ)の Webページを見て下さい。FSPACEのよっしーさんのページも情報が充実しています。

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参考になる本はありませんか?

【お答え】:次の本が参考になると思います。

天文雑誌

800円前後で購入できる、天文雑誌3誌の12月号にはそれぞれ詳しく、しし座流星群のことが解説されています。もう売り切れてるかな? 発売日も載せておきます。

  • 星ナビ(11/5発売):アスキー
  • 月刊天文(10/31発売):地人書館
  • 天文ガイド(11/5発売):誠文堂新光社

ムック・単行本

「月刊天文ガイド11月号別冊 号外!しし座流星群」誠文堂新光社(580円)

しし座流星群のために特別編集された号です。マンガなどもあって、わかりやすく編集されています。

長沢工著「流星と流星群」地人書館(2000円)

初心者向けに流星についてやさしく書いてあります。しし座流星群の歴史や観察方法はちょっとだけですが、気楽に読めるでしょう

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ほかに参考になるホームページはありませんか?

リンク集

国立天文台によるもの

日本流星研究会によるもの

よっしーさんによるもの(オススメ!)

日本しし座流星群観測ネットワーク連絡会(ANJRO) 流星のインターネット中継 など

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