重力の速度を測る

 重力の速度が光速であること(無限でないこと)が確かめられた!

 ニュートンは「重力は瞬時に伝わる。 重力の伝わる速度は無限大だ。」と考えていました。
 しかしアインシュタインは「重力の伝わる速度は有限=光速である。」という一般相対性理論を提唱しました。 たとえば、地球は太陽の回りを1年かけて公転しています。 太陽と地球の距離は約1億5000万kmであり、太陽の光は約8分かけて地球に届いています。 重力も光の速度で伝わるとすると、ある瞬間に太陽が跡形もなく消えてしまっても、地球は8分間、 何事もなかったように太陽の光を感じ、公転し続けることでしょう(8分後からは、まっすぐ飛び去ることになります)。

 一般相対性理論は宇宙の成り立ちを支配する根源的な法則ですが、 その基本原理である「重力の速度は光速である」を実際に確かめた人はこれまでいませんでした。 クェーサーJ0842+1835のVLBA Image(
NRAO/AUI/NSF)
 今回、アメリカ電波観測所(NRAO)の研究者たちが、クェーサーという非常に遠方にある天体の前を木星が横切る現象(10年に一度くらいしか起きない珍しい現象です)を観測し、 重力の速度が無限大でないことを確かめました。

 クェーサーの前を木星が横切ると、木星の重力の影響でクェーサーの光が曲げられます(「重力レンズ効果」)。 木星がクェーサーの前を横切る「瞬間」の時刻は正確に予測できますので、実際にクェーサーの光が影響を受ける時刻を正確に測定できれば、 重力が「瞬時」に伝わるのか、有限の速度で伝わるのか、を区別することができるのです。

 この観測は非常に微妙な正確さが必要となります。今回は重力の速度測定に初めて成功したものとして、大いに注目されます。

 ちなみに「木星と光速」というと、1675年にレーマーが光の速度が無限大ではないことを、木星を観測することで確かめています。 木星はそういうめぐり合わせを持った星なのですね。
 2003年1月現在、木星は午後9時ころ東の空で、とても明るく見えています。

原文は英語ですが、
 アメリカ電波観測所(NRAO)のプレスリリース
をご覧ください。

2003.1.10記

【天文・宇宙】の話題
科学あれこれ
ホームページへ