『水族館への招待』

鈴木克美
丸善ライブラリー112 641 円+税
水族館に限らず、博物館を楽しむためには、そこがどんなところかをよく知っているといいでしょう。本書はその目的によくあった本だといえます
まず、本書の章立てを見ておきましょう。
I-斜めに読む水族館の歴史。
II-日本人の自然観と水族館。
III-水族館と日本の社会。
以上3章からなっています。水族館をお魚がいる楽しいところ。幼稚園の子とカップルが喜ぶだけの場所。なんて思っていたら「おやっ」と思ってしまいますよね。ずいぶんハードな内容のようです。実は、本書に通底する言葉には「ためになる」と「おもしろい」があります。日本の水族館は両方ともを同時にめざしたのだけれど、日本では「おもしろい」水族館が先にたって、なかなか「ためになる」水族館がオモテにでてこなかったのではないか? と筆者は主張します
本書の第2章には、とても印象的なシーンがあります。それはパリのトロデカロ水族館で先生が生徒に水槽の前でいろいろと教えている場面です。こうした姿が日本でみられないのはなぜだろう? というのもまた、筆者の「ためになる」「おもしろい」論に通底した疑問ですね。
水族館にかぎらず、実物を展示する施設での「カシコイ来館者のあり方」はどうすべきなのか? 重要なことを本書は教えてくれているようです。


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