国立天文台・天文ニュース (532)

今年の惑星集合

 「今年の惑星直列はいつですか」といった種類の質問が、ときどき広報普及室 にあるようになりました。今年は、肉眼で見える水星、金星、火星、木星、土星 の5惑星が5月13日にかなり集まります。しかし、そのときの広がりは30度以上も あり、直列というのにはほど遠い状態です。

 「惑星直列」は多くの人の興味を引くらしく、過去にもかなり問い合わせがあ りました。でも、いくつもの惑星が完全に直線上に並ぶことは現実問題として起 こり得ず、天球上の比較的狭い範囲に集まるのがせいぜいです。そこで、惑星が 集まることをここでは「惑星集合」と呼ぶことにします。2年前の2000年5月17日 には、上記の惑星に太陽を加えた6天体が20度以内の範囲に集まる惑星集合があ りました(天文ニュース330)。

ただし、このときは太陽を含めた集合でしたから、惑星は太陽とほとんど前後して出没し、集まった様子を直接に目で見ることはできませんでした。

今年もっとも惑星が狭い範囲に集合する5月13日には、太陽の東側の天球上に、 太陽に近い方から水星、土星、火星、金星、木星の順で、5惑星が33.3度の範囲 に並びます。このときは、日没後の西空にこれら惑星の集合を見ることができま す。東方最大離角から13日たった水星はちょっと見にくいと思われますが、土星 から木星まではたやすく見ることができるはずです。水星から金星までは比較的 小さくまとまって12度以内に納まり、木星だけ大きく20度ほど東に離れている形 です。当日の5月13日でなくても、その前後数日なら、ほとんど似た状態で賑や かに集まった惑星を見ることができます。ぜひご覧になってください。ときに 「惑星が集まるとその引力で地球に災害が起こる」とまことしやかにいう人がい ますが、そのような心配はまったくありません。

 惑星の集合がどのくらいの頻度で起こるかも、しばしば質問され、話題になる ことです。それに興味をもったメイス(Meis,S.D.)たちは、水星から土星までの5 惑星が、天球上で25度以内に集まる機会を、紀元前3102年から2745年までの6000 年近くにわたって調査しました。そして、その間に25度以内に集まる惑星集合が 86回あることを発表しています。そのうち9回は5惑星が10度以内に集まる惑星集 合です。86回のうち前回に当たるものはもちろん2000年5月17日の集合でした。 このつぎに25度以内に集まる惑星集合は2040年で、その9月8日には、5惑星が9度 16分の範囲に集まるということです。

参照 Salvo De Mais et al, J.Br.Astron.Assoc.104,p.293-297(1994).

      2002年3月7日                        国立天文台・広報普及室