『西国科学散歩(上)(下)』

西條敏美
裳華房 各1500円+税
日本は明治期に科学技術が一気に移入されて、文明開化が起こった。と歴史では習ったものですが、これは正しくありません。江戸期にはオランダや中国を通して最新の西欧科学がどんどん入ってきていて、それは「寛政暦」などの作成にもいかされています。
さて、本書では、そうした江戸期から昭和の半ばにいたるまでの、様々な日本人科学者の足跡を実際に訪れることができる場所と共に紹介しています。西国というのは近畿から西という意味で、つまりは江戸・東京の中央部で発展した政府に保護されたものではなく、地方で育った巨人たちにスポットを当てているということになります。ただし、寺田寅彦のように明らかに東京で活躍した人や、海野十三のように東京の出版界がないと活躍のしようがなかった人も紹介されていますから、その辺は多少割り引かなければいけないでしょう。
ともあれ、近畿以西に関わりのある人は、近所に意外な業績をあげた人の足跡を見つけることができ、なかなかエキサイティングな本だといえましょう


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