「幕府天文方御用 伊能測量隊まかり通る」

渡邊一郎
NTT出版 1997年 3800円+税 ISBN4-87188-499-6
 タイトルにある「伊能」とはもちろん、江戸時代の日本において初めて精密地図を作った「伊能忠敬」のことです。彼が行なった日本地図作成プロジェクトは幕府天文方が担当した事業でした。というのも、伊能忠敬の日本測量の直接の動機は、彼の師匠である天文方・高橋至時が天文学研究の必要性から地球の大きさを知りたかった点にありました。
 さて、伊能忠敬の足掛け17年、延べ十次に及ぶ測量プロジェクトの様子を、豊富な資料に基づき見事に再現しています。
 そもそも伊能プロジェクトは何を目的としていたのか、測量の具体的な方法はどうであったか、現地での人々の対応はどのようなものか、などの具体的な様子を、伊能の測量日記や日本各地に残る地元資料に基づいて紹介しています。また文章は平易かつ明快であり、親しみやすいものとなっています。解説コラムや注釈なども豊富にあり、参考文献も紹介されていますので、忠敬のことを調べる時の参考書としても使えます。
 もちろん、伊能隊が行った天文観測の様子や、天文方をはじめとした当時の天文学者達もたくさん紹介されており、科学ファンの眼からも十分楽しめますので、ご一読をお勧めします。


科学の本だなへ
科学ニュース・トピックへ
ホームページへ