『暦をつくった人々』

デイヴィット・E・ダンカン
河出書房新社 2300円+税
論評をする前に、簡単な感想を一つ。本書はとてもおもしろい。本好きな人にはこたえられないだろう。ぐいぐいと引き込まれ、いつのまにか最後まで読んでしまう本である。イギリスでは20週間もベストセラーのトップ10にランクされたそうだが、テーマだけでなくおもしろいからだといいたい。

0から暦=カレンダーを作るというのは、かなり難しい作業である。今でこそ、1年が365日(うるう年で366日)なんてのは「常識」であって、それをわざわざ問う人もいない。しかし、もし、カレンダーがなければ、果たして今日が何月か? そもそも1年というのはどのくらいの長さなのか? わかるだろうか? ロビンソン・クルーソーのような漂流ものの文学作品にも、必ず、カレンダーがテーマに出てくる。カレンダーとはつまり文明の象徴ということなのだ。

本書は、カレンダーがどのように成立してきたのか? 時と暦の両面から追った壮大なドキュメントであり、歴史物語である。そこに表れる科学は、まず天文学であり、数学であり、記述学であり、近代にいたっては物理学であり、精密工学である。精密な暦=カレンダーを作るというのは、非常に難しいことなのだ。ということを本書はいやというほど教えてくれる。普段意識していないことの重要性を教えてくれるのが本書である。2000年問題などでもなければ、その重要性はなかなか理解されないが。


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