なゆた望遠鏡を用いた
次期小惑星探査候補小惑星、近地球型小惑星、及び、ベスタ族小惑星の可視分光観測計画
長谷川直1)・安部正真1)・黒田大介1,2)・森淳3)・時政典孝3)・尾崎忍夫3)
1)宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部、2)総合研究大学院大学、3)兵庫県立西はりま天文台公園
・小惑星を分光すると何がわかるか?
 +大まかな表層の鉱物組成の同定が可能に
 +隕石との比較が可能に
・小惑星の色と存在分布について
  −Cタイプ小惑星:小惑星帯(2.2-3.3AU)の外側に多く存在
  −Sタイプ小惑星:小惑星帯(2.2-3.3AU)の内側に多く存在
  −Xタイプ小惑星:小惑星帯(2.2-3.3AU)に平均的に存在
  −Dタイプ小惑星:木星トロヤ群(5.2AU)では支配的に存在
  −Vタイプ小惑星:量は僅かで、ベスタ(2.3AU)付近に集中して存在
・小惑星の色と隕石との対応
  −Cタイプ小惑星:炭素質コンドライト(始源的な未分化隕石)
  −Sタイプ小惑星:普通コンドライト(落下数が多い未分化隕石)
          :石鉄隕石(金属と岩石が混在している分化隕石)
  −Xタイプ小惑星:鉄隕石(金属質の分化隕石)
          :Eコンドライト(金属成分が多い普通コンドライト)
          :変成したタギシュレイク隕石
  −Dタイプ小惑星:タギシュレイク隕石(最も始源的な隕石)
  −Vタイプ小惑星:HED隕石(玄武岩質の分化隕石)
・ベスタ族小惑星の分光探査の意義
+ベスタは小惑星帯の中で確認されている
 唯一の地球型天体
+ベスタには族(軌道要素の似た天体の集
 まり)があり、その起源はベスタ自身か
 らでた破片と考えられている
+ベスタの周りにどれくらいベスタ起源の
 小惑星があるか知りたい
 −族を形成した時の衝突現象の規模の推
  定
 −近地球型小惑星やHED隕石への供給
  元としての規模の推定
・近地球型小惑星の分光探査の意義
 →近地球型小惑星の分布・起源の解明
・次期小惑星探査候補天体の分光探査
+はやぶさ探査機は小惑星イトカワを詳細
 探査を行い、現在サンプルリターンを目
 指して奮戦中
+はやぶさの次の小惑星探査を考えている
+探査計画としてはやぶさ計画の時と同様
 に近地球型小惑星の探査を考えている
+但し、小惑星イトカワはSタイプ小惑星
 であった為に、次回は異なるスペクトル
 タイプの小惑星を考えている
+できれば、より始源的なCタイプ小惑星
 の天体を探査したい
+しかしながら、現在の所、探査計画に適
 当なCタイプ小惑星はみつかっていない
+そこで、なゆた望遠鏡にて、次期小惑星
 探査候補天体探しを行う
Copyright. A, Ikeshita / MEF / JAXA, ISAS
・可視光分光による分別
 +小惑星の分類は以下の2つで判別
  1)コンティニュームの傾き
  2)1μm付近の輝石・橄欖石起源のブロー    ドな吸収の深さや幅
 →つまり、0.5〜1.0μmにかけてのス
  ペクトルができれば取得できれば、小惑星
  のスペクトルタイプの判別が可能になる
・小惑星可視分光用の概要
 +なぜ、なゆた望遠鏡でなのか?
   −シーイングの良さ
   −観測を満たす精度の高いトラッキング(0.5秒角@10分間)
   −現在ある可視分光器の一部パーツを取り替えるだけで実現可能
    (フィルターホイールへの追加)
 +小惑星分光用付加パーツの概要
   −低分散グレーティング(150g/mm, Blaze800nm)
   −幅広スリット(8秒角)
 +対象となる小惑星の等級
   −V等級で16等より明るい天体を対象にしている
 +現状
   −今週、評価の為のテスト観測を行った
   −結果は現在解析中である
・小惑星分光の特異な点
 +0.5〜1.0ミクロン(広波長範囲)で  の%レベルの傾き測定
 →現状ある既存の天文台の通常の分光器では  この様な観測は難しい  →→小惑星のスペクトルを取得できるよう分   光器を新たに用意する必要がある