ケンタウルス座.
John Devis の星図 Atlas Celeste (1645-50) から.
ケンタウルス座
設定者はプトレマイオス.
おとめ座,てんびん座の南に広がる星座で,半人半馬のケンタウルスを表しています.夏になると,さそり座の右にケンタウルス座,左にいて座とケンタウルスが蠍を挟んで対峙します.
ωはωという星名がついていますが,実は球状星団です.ジョン・ハーシェルが南アフリカで観測し,球状星団であることを明らかにしました.やや潰れた形をしているので,似通った形状の球状星団のなかでは個性に溢れていると言えるでしょう.
ケンタウル座の神話
ケンタウルス座のケンタウロスは半人半馬の種族でした.酒好きで,粗野なものどもでした.いて座の射手もケンタウロスでしたが,これには全く別の性格が与えられています.
この星座は非常に古く,アレンによればくさび型文字の粘土板の刻印を見ると,メソポタミアの射手の神ネルガル(あるいはネリガル,戦いの神)の絵と関係があることがわかるということです.
ケンタウロスは下半身が馬で,そこから人間の胴体が延びています.人間の体のうち首と頭は馬となっています.この姿は,最初に軍装に身を固めた馬上の騎手を見た時の恐ろしさが印象に残って浮かんだものかも知れません.まだ馬を飼いならしたことがなく,馬の背に乗ることなど想像できなかった人々が乗り手が馬と離れていると見るのは難しかったのではないでしょうか?それで,馬上から炎の矢を浴びせかけた戦士たちは,上半身が人間で下半身は動物の4本足という奇怪な半人半馬の生き物と見えたのではないでしょうか?イスパニョーラ島とメキシコの原住民は,侵略してきた馬上のスペインの戦士を最初に見た時にそうした印象を持った,という話が伝えられています.
ケンタウルス座はヘルクレスに関係しています.いて座の神話の紹介の中で,ヘルクレスがケンタウロスのフォルスを尋ねたときにケンタウロスといさかいが起ってケイロンが死んでしまう顛末に触れましたが,ケンタウルス座はこのフォルスを描いているということです.フォルスはこの様子を見てヘルクレスの矢の偉力に驚きました.死体から矢を引きぬいてそれを見ていると,矢は彼の手からすべり落ちて足に刺さり,フォルスはあえなく死んでしまいました.これを聞いたヘルクレスは彼をオリンピア山につづく半島の内陸部にあるフォロエ
山の麓に葬るべく引き返しました.ゼウスはフォルスの評判が良いことを聞き,彼の姿を天に配しました.こうしてケンタウルスのフォルスの星座ができました.
ケイロンとフォルスの2人のケンタウルスが星座になっているのは偶然ではなく,古代の工芸品の意匠に2人のケンタウルスが向き合っている姿が描かれているのが見られます.ミケーネ文化の断章というところでしょうか.
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主な恒星
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符号
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名前
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意味
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等級
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距離
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α
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リゲル・ケント
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ケンタウルスの足
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-0.3
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4.4
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スペクトル型:G2V+K1V.全天3番目の輝星.K型星と周期80年の実視連星.プロキシマはこれらからずっと離れた第3体.
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β
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ハダル
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地面
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0.6
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530
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スペクトル型:B1III.α星と並んで明るく見えます..0.157日と352日の周期を持つ分光連星で、多重星系らしい。
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γ
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2.2
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130
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スペクトル型:A1IV.近接連星系.ヒヤデス群のメンバーらしい
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δ
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2.6
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390
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スペクトル型:B2IVne.ガス殻星.カシオペヤ座γに類似
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ε
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2.3
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370
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スペクトル型:B1III.B1p型星と実視連星系
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ζ
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2.6
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380
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スペクトル型:B2.5IV.0.1等ほど変光します
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η
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2.3
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310
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スペクトル型:B1.5IVne.ガス殻星.カシオペヤ座γに類似
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θ
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メンケント
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(不明)
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2.1
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61
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スペクトル型:K0IIIb.
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ι
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2.8
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59
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スペクトル型:A2V.
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μ
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2.9:
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450
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スペクトル型:B2IV-Ve.F2V型星と実視連星系.ガス殻星.カシオペヤ座γに類似
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星雲・星団・その他
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ω (NGC 5139)
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球状星団.日本から双眼鏡でよく見えます.距離は17,000光年.
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