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はくちょう座 Cyg

星座解説 天体解説

 はくちょう座.
 設定者はプトレマイオス.


 夏の天の川の中に大きな十字となって見えます.これを鳥の姿と見るのはむりがなく,南十字に対し,Northern Cross 北十字と名づけたのもうなづけます.キリストの十字架と呼んだこともあったと言いますが,秋から冬にかけての夕方,北西の地平線下に沈んで行く姿はまさに地面に突き刺さった十字架に見えて,その名のとおりです.

 天の川に浮かんでいるだけにさまざまな種類の天体があふれています.中でも,白鳥の首にあたるη星の近くにあるはくちょう座X-1というX線源はブラック・ホール候補の第一号に挙げられた天体で,5.6日周期の近接連星系となっています.

 61番星は最初に年周視差が測定された星として天文学史上,大きな意義を有しています.1838年,ベッセルによって測定されました.5.2等と6等の2つから成る実視連星.第3体の存在も考えられています.

 SS星は矮新星(ふたご座U星が代表)と呼ばれる種類のなかで最も明るい星です.1年に数度,新星に似た爆発現象を起こします.やはり連星系です.

 V444はウォルフ・レイエ星を伴星とする食連星系.数少ないサンプルの一つです.

 V1500は1975年,デネブの近くに出現した新星.1.8等に達し,極めて明るい新星となりました.19等以上,増光しました.


■夏の大三角形■
 こと座のベガ,はくちょう座のデネブ,わし座のアルタイルを結んでできる三角形が「夏の大三角形」です.











主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α デネブ めん鳥の尾 1.3 1800
はくちょうの尾に輝く1等星.スペクトル型:A2Iae.
β アルビレオ 不明 2.9 380
白鳥のくちばしの星.スペクトル型:K2II+B0.5V.
5.1等星と二重星となっていて,しばしばルビーとサファイヤにたとえられます.主星は分光連星か?
γ サドル めん鳥の胸 2.2 600
十字の中央の星.スペクトル型:F8Ib.
δ  −−− −−− 2.9 170
西の翼の星.スペクトル型:B9.5IV+F1V.6.4等星と実視連星
ε ギェナー  翼 2.5 72
東の翼の星.スペクトル型:K0III.
P  −−− −−− 4.8: 4000?
スペクトル型:Bp.はくちょう座P型変光星.ガス殻星.新星

星雲・星団・その他
NGC 6992,6960
ベール星雲,網状星雲とも呼ばれる超新星残骸.約6万年前の爆発か.強い電波とX線が観測されています.白鳥の東側の羽根の中間部に広がっています.
NGC 7000
北アメリカ星雲.星間物質と塵,星がまじった巨大な星雲.デネブの東3度で,すぐ右側にはペリカン星雲があります.
はくちょう座A
有名な電波源で,最初に電波で発見され,後にまゆ状にくびれた形の銀河に同定されました.銀河から高速度で飛び出したガスが銀河間ガスと衝突して電波を放つと考えられています.クエーサーにも同様の電波放射が見られることから,活動源に似通ったものがあると見られています.
流星群:はくちょう
出現期間は8/10-31.極大は8/19-20.
母彗星は不明.出現数は少ない.

はくちょう座の神話

 白鳥はある女性を誘惑するため変装して空を飛んできた神ゼウスの姿です.その女性が正確に誰だったかには諸説があります.
 ある話では,ゼウスの愛情の矛先はニンフのネメシスであり,ゼウスが言い寄った結果,卵が生まれました.それがスパルタの王妃レダに与えられました.卵の殻を破って出てきたのがトロイアのヘレンとなった美しい子どもでした.
 また別の話では,卵を生んだのは王妃レダ自身であったと言います.彼女はゼウスに誘惑されたのに,その日も夫のテュンダレオス王と寝ていました.そして,卵が一個(2つとも言う)生まれました.何と言ってもゼウスは鳥の姿となっていたのですから,レダもテュンダレオス王もそれとは気づきませんでした.卵から(2つの卵からとも言う),カストルとポリュデウケス(ローマ神話ではポルックス)がかえりました.これが天に見えるふたご座となりました.
 あるいは,卵からは2人の女の子が生まれたが,それがヘレンとクリュタイメストラだったとも言われています.ヘレンとポリュデウケスはゼウスの子で,不死身でした.カストルとクリュタイメストラはレダと普通の人間のテュンダレオスとの子で,やがて死んでしまうという人間としての運命を持っていました.