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ヘルクレス座 Her

星座解説 天体解説

 ヘルクレス座.
 設定者はプトレマイオス.


 輝星が少なく全体の形をたどるのはむずかしいが,中心となっているH型が見つかれば見当がつくでしょう.

 そのHから南へ下がったところにちょっと目だった2つの星が並んでいます.へびつかい座のα星ラスアルハゲとヘルクレス座のα星ラスアルゲチです.α星ラスアルゲチは3.0等から4.0等まで変光する半規則変光星で,太陽直径の600倍もある赤色超巨星で,オリオン座のベテルギウスに似ています.

 ヘルクレスの腰にあたる部分にあるのが球状星団のM13で,球状星団の代表格であり,5.7等という明るさで小望遠鏡でも見つけやすいでしょう.

 DQ星は1934年出現した新星で,1等程度まで明るくなり,約100日間かけてゆっくりと4.5等位に減光した後,すとんと8等あたりまで暗くなり,爆発前へ戻るいうおもしろい変化をしました.後に食連星であることが分りました.

 ヘルクレス座には約5〜6億光年先に銀河団があり,エイベルA2151やA85が挙がっています.

主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α ラス・アルゲティ ひざまづく者の頭 3〜4 370?
スペクトル型:M5Ib-II.分光連星(G5III+F2)と実視連星系.
β コルネフォロス 棍棒を持つ者 2.8 150
スペクトル型:G7IIIa.
ζ --- --- 2.8  35
スペクトル型:G0IV.5.6等星と実視連星で,1782年ハーシェルが発見.

星雲・星団・その他
M 13 (NGC 6205)
球状星団.5.7等.赤経16h40m,赤緯+36°33′.
M 92 (NGC 6341)
球状星団.6.5等.赤経17h16m,赤緯+43°12′.1777年,ボーデが発見.
















ヘルクレス座の神話

 ヘルクレス座はゼウスの数ある恋愛劇から生まれた息子の一人ヘラクレスを表しています.妻の女神ヘラが寝ている時にゼウスは乳飲み子ヘラクレスを彼女の胸に抱かせたので,ヘラクレスは不死の身となりました.それはヘラを騙すような扱いでした.女神の聖なる乳を含んでヘラクレスは不死の身となりましたが,その後ずっと彼は女神ヘラの恨みにさいなまれることになります.女神は夫ゼウスの背信行為を怒っていたのでした.
 ヘラはヘラクレスの人生を生きながらの地獄にしようと画策します.彼は不死となったため,殺すことはできませんでしたが,彼の人生を悲惨なものにすることはできました.ある時,ヘラはヘラクレスが気が狂って収拾のつかないほど激怒するように魔法をかけました.ヘラクレスはとても背が高く,強く,そして武器の扱いに優れていたので,気が狂ってしまうと,誰もそれに対抗したり,抑えたりできません.狂気の果てに,彼は自分の子どもを殺してしまいました.
 われに返ると,ヘラクレスは深い悲しみと良心の呵責にさいなまれ,デルフィの神託所にその惨事の償いをしたいと頼みこみました.彼が神託所から受けた返答はミケーネのエウリュステウス王に12年にわたって仕えなければならぬというものでした.そして,この時,神託所からギリシャ語で「ヘラクレス」と書かれたその名前(それは「ヘラの栄光」という意味である)を授かったのでした.
 王がヘラクレスに課した以下の仕事はヘラクレスの12業として知られるようになりました.


 1) ヘラクレスはネメアの谷のライオンを退治し,何も突き通すことができないその毛皮を外套としました.そのライオンはしし座として記念されています.
 2) 多頭の海蛇を退治し,それ以後,海蛇の血を毒薬として矢の先につけて使いました.かに座の蟹はヘラが海蛇と戦っているヘラクレスの気をそらすために送ったのでした.
 3) セリネイアンの雌鹿を捕まえました.これは女神アルテミスが所有していた金の角と黄銅のひづめを持った伝説上の鹿でした.
 4) セリネイアンの雄猪をわなで捕まえました.アルカディアのぶどう園を破滅に追い込んだ怪物のような猪でした. 
 5) エリスのアウゲイアス王の糞がいっぱいの馬(家畜)小屋をきれいにしました.
 6) 怪物のようなスチュムパリデスの鳥を追い払いました.アルカディアのスチュムパリデスの町の近くの湖を荒らし回っていたその鳥どもは黄銅の爪とくちばしを持つ大きな人食い鳥でした.まるで矢のように羽根を飛ばしていました.
 7) クレタ島を荒らし回っていた火を吹く雄牛を捕まえました.
 8) タラスのディオメデス王の肉を食らう馬を捕まえました.
 9) ヒッポリテの帯を奪いました.カッパドキアのアマゾンの女王が持っていた豪華な帯でした.
 10) ゲリュオンの牛を盗み取りました.3つの体を持った怪物のゲリュオンは西の遠い陸地を支配していました.この仕事を成し遂げる途上,ヘルクレスはジブラルタル海峡に岩を積み上げましたが,これは後にヘルクレスの記念碑として知られるようになりました.
 11) ヘスペリデスの金のりんごを盗み出しました.そのりんごは結婚の贈り物としてヘラにプレゼントされました.りんごを守っていた竜はりゅう座となって空に掲げられています.
 12) 怪物のような犬ケルベロスを地獄から甦らせました.地獄は神ハデスによって支配された死の世界でした.その忌まわしい犬は3つの頭を持っており,その背には蛇が巣食い,尾は竜の尾でした.

 ヘラクレスには悲劇的な再婚劇が待ち構えていました.冒険を終えたヘラクレスはオイネウス王の娘デイアネイラと結婚しました.ですが,2人は永く幸福に過すことはありませんでした.旅行していたある日,ヘラクレスとデイアネイラは水かさの増した川を渡らなければなりませんでした.ヘラクレスは泳いで渡りましたが,妻はケンタウロスのこぎ手によって渡し舟で渡ることになりました.このこぎ手たちはデイアネイラをわがものにしようと狙っていました.ヘラクレスはそこでうみへびの血を塗った毒矢を放ってそのケンタウロスを射ました.死に際してケンタウロスはデイアネイラに自分の血を浴びかけ,後の復讐としたのでした.ケンタウロスの血は,彼女の夫ヘラクレスに貞節を守らせることになるはずでした.ある日,デイアネイラはヘラクレスが他の女性に関心を抱いているのではないかと疑うようになり,彼女はあの時のケンタウロスの血がついた下着を着けさせました.ケンタウロスを倒すときに使った矢にはうみへびの血が使われており,それが混じっていましたからその血は毒でした.
 ヘラクレスが下着を着けると,毒の入った血が働きだし,ヘラクレスの肉を燃やして骨のようにしてしまいました.でもヘラクレスは死ぬことはありませんでした.そこで自らを火葬用の積み薪にすることにし,ライオンの毛皮の外套を広げ,それに横たわりました.炎は彼の不死でない部分を焼きましたが,不死の部分はオリュンポス山に昇っていきました.それを惜しんだゼウスは星々の間に彼を配し,ヘルクレス座にしたということです.