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こと座 Lyr

星座解説 天体解説

 こと座.

 設定者はプトレマイオス.
 一等星ベガを中心として天の川の西岸にうかぶ星座.

 α星のベガは七夕の織女星.1839年,ロシヤのプルコワ天文台のストルフェがベガの年周視差を最初に測定しました.1838年から1839年にかけてベッセルやヘンダーソンとともにストルフェが恒星までの距離を最初に測るという天文学史上大きな業績を残しましたが,その年周視差測定の最初のサンプルとなったのがベガでした.分光標準星としても大切な星で,そのあたりの性質については一等星の解説をご覧ください.

 ベガはまた太陽向点にも近い.太陽系全体は周囲の星に対し秒速19kmの速度で銀河系内を運動していますが,その向っている方向を太陽向点と言います.1783年,いつかの星の固有運動からハーシェルが初めてその位置を推定しましたが,それがベガからややヘルクレス座寄りのところでした.

 β星はこと座β型変光星の代表で,3.4〜4.3等で変動します.特異な食連星で,スペクトルには主星しか現れていませんが,見えない伴星の方が6倍も重いらしく,謎めいています.

 εは3.5分角ほど離れた実視連星系で,それぞれがさらに実視連星系を成しているという4重星系です.

 RRはこと座RR型変光星の代表.14時間弱の周期で脈動しています.この種の変光星は球状星団に見つかることが多く,老齢の星とされています.

■夏の大三角形■
 こと座のベガ,はくちょう座のデネブ,わし座のアルタイルを結んでできる三角形が「夏の大三角形」です.

 
主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α ベガ 落ちる鷲 0.0 25
スペクトル型:A0Va
β シェリァク 3.4:  300
スペクトル型:B7Ve+A8p.こと座β型変光星の代表
ε −−− −−− 5. 160
スペクトル型:A4V,F1V,A8Vn,F0Vn型星から成る二重・二重星系.

星雲・星団・その他
M 56 (NGC 6779)
球状星団.1779年1月19日,メシエが新彗星を発見したちょうどその夜にこれを発見,記述しました.
M 57 (NGC 6720):リング星団
惑星状星雲.1779年,口径7.5cmの望遠鏡で発見されました.この種の天体では最も有名.リング星雲やドーナツ星雲とも言います.星雲全体は9.3等で,14.5等の中心星により光っています.秒速20〜30kmの速度で膨張しており,10万年もたてば霧散してしまうと見られます.
流星群:こと
出現期間は4/20-23.極大は4/21-23.母彗星は1861I.出現数は中程度.紀元前より出現の記録があります.
















こと座の神話

 こと座はオルフェウスの琴とされていますが,それは使いの神ヘルメスが発明したものでした.ヘルメスはたまたま空っぽの亀の甲を見つけ,手にとってひっくり返しては,むなしくたたいていました.甲羅に共鳴した響きを聞いて,甲羅に糸をかけて見ようと思いつきました.やってみると糸は美しい響きを奏で,こうして琴ができました.
 ヘルメスは琴を神アポロに捧げました.ヘルメスは富と繁栄をもたらす不思議なつえと琴を交換したとも言われています.また,ヘルメスがアポロの牛を盗んで捕まった時,アポロの怒りをしずめるために琴を使ったとも言います.
 アポロはその琴をオルフェウスにやりました.オルフェウスはイヤソンやアルゴ船団の一行と共に航海したこともありましたし,当代随一の音楽の名手でした.オルフェウスの奏でる曲は怒り狂っている人や狂気した悪漢でさえ魅了しました.琴をたずさえたオルフェウスは岩や流れさえ魅了しました.オークの木がオルフェウスの歌声をもっとよく聴くためタラスの海岸に移ったということです.
 オルフェウスは妻エウリディケを亡くし,地獄の神から彼女を救い出そうとして失敗していました.オルフェウスは民衆から攻撃されて自殺してしまいました.ある話では,ディオニシウスの手下どもが興奮してその音楽家の体をばらばらに裂いたと言います.別の話では,オルフェウスを刺して死に至らしめたのは女どもの集団だったという話もあります.彼女らはその音楽家が,死んで久しいにもかかわらず亡き妻をいまだに愛していて彼女らを突き放したので,怒っていたのでした.民衆がオルフェウスを殺した後,彼女らは琴を川に投げ込んでしまいました.
 ゼウスはハゲワシを遣わして琴を取り戻し,それを星にしつらえました.あるいはまた,琴を天に上げたのは9人のミューズたちであったとも言います.