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オリオン座 Ori

星座解説 天体解説

 オリオン座.
 設定者はプトレマイオス.

 ベテルギウスとリゲルという二つの一等星を有する代表的な冬の星座.ベテルギウスを除く多くの星がオリオン・アソシエイションという距離1500光年ほどのところにゆるやかな星団を構成しています.いずれも若い星たちです.他にはと座μ星,ぎょしゃ座AE星などもその仲間と考えられています.オリオン座ζ星(三ツ星の東端の星)とオリオン星雲の間あたりで約300年前に誕生した星たちのようです.


 オリオン座はいわゆるオリオン星雲M42が有名です.比較的近傍にある(約1500光年)星雲で,その性質がよく調べられています.1618年,ジエサトスという人が発見したようです.星雲全体を光らせているのは中心部にあるトラペジウムと呼ばれる4個ばかりの星たちで,暗黒星雲(分子雲)も卓越し,誕生から数十万年程度の若い天体と見られており,今でも星が生まれつつあるところです.恒星誕生を探ろうとする研究者はまずオリオン星雲に望遠鏡を向ける,というのが常道です.強い電波や赤外線も放射しています.

 FU Ori は奇妙な変光星です.暗黒星雲に包まれていて,その関係で変光しているという説と,誕生間なしの星とする説があります.

 オリオンの4角形を取り巻くように広がるバーナード・ループなどもあって,話題に事欠きません.





 

 
主な恒星
符号 名前 意味 等級 距離
α ベテルギウス 腋の下 0.4: 500
スペクトル型:M1-2Ia-Iab.0.4〜1.3等まで変光する半規則変光星
β リゲル 左足 0.1 700
スペクトル型:B8Iae:.8等の伴星と実視連星.その伴星自身は分光連星
γ ベラトリックス アマゾンの星 1.6 240
スペクトル型:B2III
δ ミンタカ 2.2:  1500
スペクトル型:B0III+O9V.アルゴル型の食連星で,6.9等星と実視連星系.オリオン・アソシエイション
ε アルミラム 真珠の帯 1.7 1300
スペクトル型:B0Iae
ζ アルニタク 腰帯 1.8 1300
スペクトル型:O9.5Ibe+B2III.4.2等星と実視連星.オリオン・アソシエイション
ι ナイルアルサイフ 剣の輝く星 2.8 1500
スペクトル型:O9III.分光連星.弱ヘリウム線星で,激しい質量放出が観測されている.いオリオン・アソシエイション
κ サイフ 巨人の剣 2.1 1500
スペクトル型:B0.5Iav.オリオン・アソシエイション

星雲・星団・その他
M 42 (NGC 1976)
いわゆるオリオン星雲.星の誕生地として詳しい研究が行われています.
馬頭星雲:B 33
馬の頭のような形の暗黒星雲.
M 78 (NGC 2068)
天の赤道上にある散光星雲.1780年,メシヤンが発見.オリオン星雲を構成する星間雲の一部です.赤経05h44m,赤緯+00°02′.
流星群:オリオン
出現期間は10/18-23.極大は10/21-23.母彗星はハレー彗星.出現数は中程度で,6世紀頃より出現の記録があります.
 

オリオン座の神話

 この猟師の星座には古い歴史があります.それは,メソポタミアのシュメール人にすでにウルアナあるいは天国の光として知られていました.それは,偉大なシュメールの英雄ギルガメシュに比せられています.彼は,おうし座となっているあの天の牛と闘っている姿とされています.
 オリオンの神話によれば,オリオンは海神ポセイドンとクレタ島のミノス王の娘エウリアレとの息子でした.オリオンはたいそう背が高く,波間に頭を出して海の底をまたいで渡ることができましたが,父ポセイドンは水面を歩く力を与えたと言われています.天でオリオンは絶対折れない青銅の棍棒を持ち,片方の手にはライオンの毛皮を持っています.
 オリオンはしばしば女性とトラブルを起しています.ある時,彼はオイノピオン王の娘メロペに夢中になり求愛しましたが,うまくいきませんでした.そこで,自棄酒のワインをしこたま飲んだある日,よろよろ歩いてその女性を力づくで連れて行こうとしました.このため,王はオリオンをめくらにして王国より追放してしまいました.めくらになったオリオンは鍛冶の神ヘファエスタスの助けを借りて,ついに上る太陽の癒しの光によって元通りになりました.
 また別の話では,オリオンはプレヤデスと恋に落ちたということです.オリオンが愛したのはプレヤデスの母親だったという話もあります.彼女の名前はプレオーネと言いました.ゼウスはプレヤデスになっている7人の姉妹を天にあげましたが,オリオンは今だに彼女らを追い続けているということです.
 オリオンは蠍に刺されて死んだという伝説もあります.その蠍は,オリオン座とはちょうど反対の天空に位置しているさそり座ということになっています.その蠍は地の神ガイヤが送ったという話もありますし,オリオンが地上の動物をみな狩りとってしまおうとしたので狩の女神アルテミスが送ったという話もあります.別の話では,アルテミスに迫ろうとしたが,アルテミスには望まない求愛であったため彼を殺そうと蠍を送ったということです.さそり座が東に昇ると,オリオンは沈むという次第で,さそりがオリオンに勝利したことを物語っています.
 蠍に毒殺された後,医術の神アスクレピオス(星座ではへびつかい座になっている)によって生き返りましたた.アスクレピオスは死んだ魂を甦らせていたため,死の世界である地獄の人口が減って困っていました.そこで,ゼウスは雷を落してアスクレピオスを殺してしまいました.アスクレピオスのおかげで後にさそり座が昇るとオリオンが沈むという様子を見ることができるようになりましたが,蠍はへびつかいに踏み潰されてしまった,ということです.
 オリオンの死については別の話もあって,それによれば,オリオンは実際にアルテミスと結婚の約束をしていたが,アルテミスの兄弟のアポロがそれに反対していたと言います.アルテミスは弓がとても上手なことを自慢していたので,ある日,アポロはアルテミスに海の彼方で揺れ動いているように見える小さな黒い物体に矢を当てることができるか,と挑発しました.アルテミスはいとも簡単に一矢でこれを突き刺してしまいましたが,それは夫となるべきオリオンでした.これを知って愕然とし,深い悲しみに包まれ,アルテミスはオリオンを星座として空に上げたということです.