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長谷川の素


 1994年10月、科学館で「青少年のための科学の祭典」が行なわれ、私はスタッフとして、また出展者の一人として参加しました。 1円玉と10円玉で電池になるという実験や燃料電池の実験をしながら、ふと「あっ、ノッポさんになりたかったのかもしれない」と思ったのです。
 ということで、私の話は、ノッポさんを見ていた頃のお話です。

ノッポさん
 「ノッポさん」というのは、NHK教育テレビで放送されていた子ども向けの工作番組「できるかな」に出ていた工作のお兄さんです。 この「できるかな」は1990年に終了してしまい、現在ではその後番組「つくってあそぼ」が放送されています。 とは言え、小学生の頃見ていたノッポさんは、私が大学生になってもノッポさんだったのです。 ノッポさんはパントマイムのように何もしゃべらないのですが、その手から次から次へといろいろなものが作り出される様子は、まるで魔法を見ているようでした。
 そんなノッポさんをプラネタリウムに登場させてしまったことがあります。 1996年3〜5月の「大阪で南十字が見えるとき」です。 登場といっても、出演したのは本物のノッポさんではなくイラストなのですが、ナレーションには本当に「できるかな」でおしゃべりを担当したおねえさんに登場してもらいました。

科学のふろく
 小学校の6年間、毎月、学研の「○年の科学」を買ってもらっていました。 当時は学校に直接販売に来ていて、中には「科学」と「学習」の両方を買ってもらっている友だちもいました。 でも、「学習」を買ってもらっているのを見てもうらやましいと思った覚えがないのは、やはり「科学」が気に入っていたからでしょうか?
 そんな「科学」の魅力は、なんといっても毎月のふろくでした。 一番記憶に残っているのは「ゲルマラジオ」。 電池がなくても音が聞こえてくるのがなんとも不思議でした。 ただ私の家は放送局から遠くて、あまりちゃんと音は聞こえなかったのですが、9歳年上の兄貴に「アンテナ線を電話機のダイヤルの指止めの金具につなぐとよく聞こえる」と教えてもらい、はっきりとラジオの音を聞くこともできました。 でも、なぜあの電話の金具にアンテナ線をつなぐとよく聞こえたのか、今でも不思議でしょうがない…。

ダイヤブロック
 プラスチック製の組み立てブロックなのですが、私が買ってもらっていたのは、ポッチが8つの基本形ばかり。 でも、だんだんと買い足してもらって、最後には大きなバケツにいっぱいになっていました。
 基本形ばかりでしたが、8つのポッチのうち1つだけを組みあわせておくと、そのポッチを中心に蝶番のように少しだけ動くことを発見して、腕が動くロボットなんてのを作っていましたね。

学研まんがひみつシリーズ
 乗り物酔いしやすいくせに、母親がバスで買い物に行くときにはついていって、帰りに1冊買ってもらうのが楽しみでした。 最初に買ってもらったのは「宇宙のひみつ」。 その後「地球のひみつ」「飛行機・ロケットのひみつ」など10冊以上買ってもらい、今でも私の知識の何割かは、このひみつシリーズで得たんじゃないかと思います。
 長らく増刷を続けていた「宇宙のひみつ」ですが、1992年に内容が一新されてしまいました。 さすがにパイオニア10号が最新というわけにはいかないか。

 こんな"長谷川の素"をミキサーにかけてオーブンに入れると…。 高校3年で理系クラスを選択し、大学の物理学科へ。 量子力学や統計力学なんてのを面白いと思うようになり、光物性論なんてものを専攻するようになり、その後、科学館の学芸員になったのでした。
何年前でしょう?
(長谷川能三:科学館学芸員)

この文章は、自己紹介として『月刊うちゅう』の「学芸員の素顔」に掲載したものです