次回サイエンスショー「世界一簡単ブーメラン」
【担当】:企画・演示
学芸員・大倉宏http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/~ohkura/
【目的】:世界一簡単な紙ブーメランを作り、揚力や歳差運動などブーメランが戻ってくる理由を解説する。
【主な内容】
1.直進運動と回転運動
真直ぐ飛ぶプラトンボ。くるくるまわるウルトラマン
2.ブーメランのハネは何のため?
風を受けたら浮き上がるのか
3.ロウソクは消えるか?
回りこむ空気。空気の流れは単純ではない
4.ボールのマジック
吹き飛ぶはずのボールが風に掴まる。
(ブロアマジック、紙風船の噴水、ストロー選手権、マシンガン陸上ヨット)
5.回転すると倒れない
車輪を使った実験
6.ブーメランは横倒しになった竹とんぼだ。
世界一簡単に作れる紙ブーメランを飛ばす など
【解説】
ブーメランは横倒しになった竹とんぼであり、ヘリコプターである。ブーメランが旋回するためには、向心力(旋回の中心に向かう力)が必要である。そのために羽根が生み出す「揚力」が使われる。向心力が必要なことは、紐に錘をつけ振り回す状況を考えれば分かり易いだろう。
揚力とは、空気の流れが作り出す流れの向きに垂直な力である。風の中に置かれた物体には流れと同じ向きに抗力(風圧、空気抵抗)が働くことはお馴染みである。しかし非対称的な物体には抗力だけでなく垂直な力も働き、これを揚力と呼ぶ。また物体が対称的な形であっても、物体の近傍で風の強さが一様でないときにも揚力は発生する。最初一様であった風の流れが物体によって曲げられ、このとき揚力が発生することを実験で紹介したい。
さて、ブーメランを立てて投げると横向きに揚力が発生し、ブーメランは真直ぐな軌道からずれてカーブする。しかしそれだけではブーメランが旋回し戻ってくることは理解できない。「揚力」が常に旋回の中心を向いていなければならないからである。
そのためには、ブーメランの回転面が刻一刻と変化して行かなければならない。この変化は何に依って生ずるのだろうか。
揚力の大きさは一般には速度の2乗に比例する。飛翔しているブーメランの羽根は上側と下側で対地速度が異なるため揚力の大きさが異なる(上側が大きい)。このため、ブーメランを倒すような力のモーメントが働く。この力のモーメントのためブーメランは歳差運動を起こす。研究会では、この歳差運動についても詳しく解説したい。
※翼の下面に空気がぶつかるために揚力が発生するという説明は問題が多い。元ネタはここ。弾丸は弾丸同士で衝突することは稀だが、空気分子は1マイクロメーター進むか進まないうちに仲間と衝突を起こしている。弾丸と同じように考えてはいけないのである。
研究会では揚力の説明をきちんとしたかったが、出席者の目が虚になってきたのでできなかった(-_-;)。揚力が発生するためにはキャンバーが必要だとは言ってないことに注意してほしい。迎え角やキャンバーなどのため、翼の上面に速い空気の流れが生じると揚力が発生するという事実をデモンストレーションしただけである。ベルヌーイの定理で説明したい人は、速い空気の流れがあると圧力が下がるからと説明したいだろうけれど、流速と静圧の関係は、原因結果と捉えるより鶏と卵の関係であると考えた方がいいだろう。つまり、静圧が低くなったから流速が速くなったとも考えられる。ベルヌーイの定理で揚力を説明することは間違いだとは思わないが、使い方には注意しなければならない。また、ベルヌーイの定理からはなぜ上面の流速が速くなるのか(静圧が低くなるということを言えば別だが)が出てこないことにも注意。研究会でもなぜ流速が速くなるかの説明はしなかった。(なぜ速くなるのかは僕には分からない。)翼により風向が変化することもデモンストレーションしたが、風向が変わるから揚力が発生するのか、揚力が発生するから風向が変化するのか、これも鶏と卵である。
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