一輪車に働くジャイロ効果
写真のように紐に吊るされた車輪を考えよう。車輪は鉛直面内で回転しており、中心から突き出た腕(軸)に紐が結わえられ吊るされている。
車輪は回転していなければ倒れてしまうが、よく知られているように、軸のまわりの回転のためにこの車輪は歳差運動を起こし、紐を中心に回転をはじめ、倒れることはない。(ここでは単純歳差運動を起こしていると仮定する。)
車輪の軸まわりの角運動量Lの大きさは変化しないが、向きは水平面内を回転することになる。重力を起源とする角運動量Lを変化させる力のモーメントNも水平面内にあり、Lに対して常に垂直である(Nの大きさも一定である)。
無限小時間dtの間の角運動量の変化は、
dL=Ndt
である。dtの間のLの方向の変化dφは、
dφ=dL/L=Ndt/L
である。ただし、後半で前式を用いた。したがって、紐のまわりの歳差運動の角速度ωpは
ωp=dφ/dt=N/L
車輪はリムの部分が非常に重いとすれば、モーメントNは
N=Mgd
で与えられる。ただし、Mは車輪の重さ、gは重力加速度、dは腕の長さである。また、角運動量Lは
L=Mωa2
である。したがって、
ωp=gd/(ωa2)
サイエンスショーで使っている車輪は半径30センチほどであるがリムだけが重いわけではないので、a=0.2としよう。d=0.15、軸まわりの回転数は、毎秒2.5回転くらいだからω=16とする。したがって
ωp=9.8×0.15/(16×0.2×0.2)=2.3
T=2π/ωp=2.7(sec.)
となり、歳差運動の周期は約3秒となる。これは実際とだいたい一致している。