乾電池ころころころりんの解説
斜面で乾電池を転がすと、単1と単3ではどちらが速く転がるかという問題です。
斜面方向への運動方程式は、斜面の傾斜角をθ、斜面を転がる乾電池の加速度をα、重力加速度をg、摩擦力をfと置くと
となります。
一方、乾電池の重さをM、半径をaとすると慣性モーメントIは、
と表せますが、乾電池は摩擦力fで回転するので、乾電池の角速度をωと置くと、
が成り立ちます。但しは角加速度です。
さらに、滑らないという条件をつけると
が成り立ちます。
これらから乾電池の加速度αを求めると
となります。
斜面を転がり落ちる加速度αが乾電池の半径aと無関係ということですから、単1電池でも単3電池でも、転がり落ちる速さが等しいことが分かります。
【蛇足】
今回滑らず転がるという条件で解きましたが、実際には滑りがあるので結果が変わる可能性があります。しかし、おそらく加速度αは、2/3という係数が1に近づいてくるだけで、半径にほとんど依存しないと思います。
それは、次のように考えるとよいでしょう。もし、摩擦fが全く働かないときは、回転せずに滑り落ちます。そのときは質点と同じように加速度αは
となります。
この式の意味は、摩擦fがゼロになる極限では係数2/3が1に近づくということです。
なおこの式でθ=90度にすると自由落下になりますが、このときはまさにf=0で加速度αは重力加速度gに等しくなっています。
円筒が転がり落ちる時は、加速の一部が摩擦で奪われ、円筒が回転すると考えてよいでしょう。奪われる加速の最大は円筒が滑らずに転がるときで、加速の1/3が失われると見て良いでしょう。摩擦がゼロの時は、上に述べたとおり回転は起きず、加速も奪われないので、質点の運動と同じになります。
位置エネルギーのどれだけが運動に転換するか