ごみ焼きはダメ
小さいころ、うちの庭では1斗缶を利用して、ごみを燃やしていたことがあります。周りは住宅街でしたが、結構空き地もあって、煙の影響もあまりなかったと思います。日曜の午後は、火を見るのが楽しくて待ち遠しかったのを覚えています。燃やすものは、紙類やビニール、木などがほとんどでした。なかでも、ビニール系のものは臭かったけれど、溶けたり縮んだり、時には緑色の炎が出るようすが面白かったのです。いま、こんな風に物を庭先で燃やしていたら、さて、周りの人からどんな眼で見られるか…。何故か?皆さんお分かりですよね。

最強の人工毒

1月号の本紙でふぐ毒「テトロドトキシン」についてのお話をいただきました。そのときの表を再掲します。

主な毒の毒性
毒の種類  LD50(mg/kg)  毒の起源
ボツリヌス菌毒素D 3.2×10−7 細菌毒
ダイオキシン 0.6×10−3 人工毒
テトロドトキシン 1×10−2 ふぐ毒
亜ヒ酸
青酸ガス
青酸カリ 10


 ボツリヌス菌が作る毒が、現在最強の毒です。本表には書いてありませんが、ボツリヌス菌とダイオキシンの間にいくつか強い毒があります。そして、ここで2番目にあげたダイオキシンは、人類が作り出した最強の毒で、大人に対しての致死量がわずか0.04mgです。
 
数年前、全国でダイオキシンの問題が吹き荒れました。いまは、そのときほどニュースの話題になることが少なくなりましたが、やはり問題のある物質であることには変わりません。 ダイオキシンがこれほど騒がれる原因になったのは、ご存知の通り、ベトナム戦争からです。

 1960年代初頭から1974年まで行われたこの戦争で、アメリカ軍は、北ベトナム軍による地の利を生かしたゲリラ戦によって大きなダメージをうけました。そこで、ゲリラが隠れにくいようにジャングルの木を枯らすため、エージェントオレンジとかエージェントホワイトと呼ばれる除草剤を大量に散布しました。 悪魔が潜む除草剤 この呼び名は、除草剤を識別する際にドラム缶につけられていた色から兵士たちが呼んだ名前です。エージェントオレンジは、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(以下略称2,4−D)と2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(以下略称2,4,5−T)と呼ばれる除草剤の混合物です。前者には塩素が2つ、後者には塩素が3つがついた化学物質です。

  そして問題になったのは、この2,4,5−Tに猛毒のポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン、通称ダイオキシンが含まれていたことによります。 2,4,5−Tは、その製造過程でダイオキシンを副生成物として生成してしまい、戦争で一緒に散布されてしまいました。さらに、悪いことにはベトナム戦争で使われた除草剤7000万tのうち、実に4000万tがエージェントオレンジだったのです。一説によると、このときのダイオキシン濃度は1.98ppmあったといわれていますので約80tのダイオキシンがばら撒かれたことになります。 この影響で、ベトナムではしばらくの間、流産が多くなったり、障害を持って生まれてくる子どもが多くなったといわれています。ベトナム帰りのアメリカ兵もダイオキシンの影響をうけたとして、軍人やその家族が政府を相手に訴訟を起こしました。しかし、アメリカ政府は、訴訟にかける時間やお金がもったいないという理由から損害賠償を行いましたが、公式には、ダイオキシンによる兵士への悪影響はなかったとしています。次回は、ダイオキシンの化学的特性について解説しましょう。 
(2002.4月記)



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