前回お話させていただいたのは、よく聞く(効く?)タウリンでした。疲労回復だけでなく、乳酸の蓄積予防、コレステロール溶解作用、心不全の治療などの効果あるということをお話させていただきました。
さて、栄養ドリンクの中には、もうひとつ皆さんのよく名前の知っている物質が含まれています。それは、カフェイン。今回は、このカフェインについて見ていきましょう。
眠気覚ましのコーヒー
眠くなったら、寝るのが一番と前回も書きましたが、そのような事ができない場面も多々あります。で、こんなときコーヒーを飲む人も多いのではないでしょうか。なぜコーヒーが眠気覚ましに効くのか?カフェインが効いて眠気を飛ばしてくれるからというのはあちこちでいわれています。カフェインの作用は、医学的に言うと「大脳皮質に作用し、感覚受容能、精神機能を亢進する。」
そのため、眠気が除去され、眠気覚ましにコーヒーをということになります。では、コーヒーにはどのくらいのカフェインが含まれているのでしょうか。他のお茶とも比較してみましょう。
カフェイン含有率(%) 100g中
コーヒー炒り豆 1.3 |
玉露 3.5 |
ほうじ茶 1.9 |
番茶 2.0 |
紅茶 2.7 |
煎茶 2.3 |
ウーロン茶 2.4 |
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表をみておやと思いませんか。カフェイン量がコーヒーは他のお茶などと比べるととても少ないのです。しかし、実際に私達は、これらの豆や葉っぱを食べるわけではありません。豆や葉からお湯で抽出した成分を私達は飲んでいるのですから、抽出した時のカフェイン含有量を見てみましょう。
カフェイン含有率(%)抽出液中
レギュラーコーヒー 0.04 |
玉露 0.16 |
ほうじ茶 0.02 |
番茶 0.01 |
紅茶 0.05 |
煎茶 0.02 |
ウーロン茶 0.02 |
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「四訂日本食品標準成分表」より抜粋
なお浸出液はその飲み物を入れるのに適切な量で出しているので、全てが同じ量での比較ではありません。
コーヒーの入れ方、豆の引き方などの方法で変動があるのですが、コーヒー1杯には0.04%のカフェインが含まれています。ということは、カップ1杯140ml(g)として約0.056gですね。ここで玉露の方は浸出液65mlで、カフェイン量は0.104g。1杯の量が少ない煎茶の方が約2倍のカフェイン量を持っている。ということは、眠気覚ましにはコーヒーより高級な玉露がいいということにもなりますね…。
カフェインとは
カフェインのIUPAC名 1,3,7‐トリメチルキサンチン それではカフェインとはどんな物質なのかを簡単に見ていきましょう。C8H10N4O2で分子量が194.19、融点が235〜238℃の無色の結晶で苦みがあります。1820年にRungeがコーヒー豆から発見しました。その後1899年には、化合物の立体配置などを示す時によく使われる、フィッシャー投影で有名なE.フィッシャーがカフェインの全合成をおこなっています
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カフェインの構造式
カフェインの作用
カフェインは冒頭でも書きましたが、精神機能を高ぶらせ眠気を除去し、思考力を増進させる作用を持っています。また心臓に働きかけ、心筋の収縮力を強め、冠動脈を拡張させたり、胃酸の分泌、腎臓や尿細管に働きかけることで利尿作用もあります。
また若干ながら習慣作用があり、取り過ぎると副作用として不眠、不整脈、めまい等の症状を出す事もあるのです。この習慣性も2〜3日でなくなるとはいわれていますが、個人差もあるでしょう。
カフェインのこのような作用を避けたいが、コーヒーは飲みたいという人たちもいてそのような人たちの中にはカフェインレスのコーヒーを飲む人もいます。但しカフェインを取り除くと風味などもなくなり味気なくなってしまいます。
ところが、最近コーヒー豆の遺伝子を組替えてカフェインを除去する事が可能だという研究発表が、2000年8月のNature誌にありました。これは、御茶ノ水大と筑波大、そしてイギリスのグラスゴー大学の共同研究で分かったことです。いずれ風味も普通のコーヒーと変わらないカフェインのないコーヒーが出てくるかもしれません。
さて、コーヒーよりも玉露にカフェインが多いのであれば、玉露の方がいろいろと効きそうですが、お茶の方にはアミノ酸の一種テアニンというものが含まれていて、これがカフェインと共存するとカフェインの働きが穏やかになります。それから、玉露の値段とコーヒーを比較してしまうと躊躇するものがありますよね。そして、何よりも葉っぱの状態やお湯の入れ方、むらし方などで豆や葉の中の成分が抽出される割合も大きく変わってきます。
眠気覚ましには、お手軽なインスタントコーヒー、でしょうかね?
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