大学に入るといろいろな人がいるなあと思いましたが、入ったサークルの先輩もなかなかでした。彼女曰く「お肌にはスイカパックが効く」とのこと。どう効くのかははっきり聞きませんでしたが、実践もしたことがあるらしく、「結構いいのよ」とのことでした。ここまで極端ではないにしろ、自分で化粧水を作られる女性の方もいらっしゃるでしょう。もしかしたら、中には、男性も…。


手作り化粧品
 肌に直接つける化粧品も使われる薬品は、メーカーも慎重に検査していることと思います。それでも肌に合わなくて、自ら化粧水を作る人たちもいて、ユズを使った物などがあります。そのような中で静かなブームになっているのが、尿素とグリセリンと水で作る化粧水です。作った物を原液のまま、もしくは、薄めたりして、顔や手足を含めた全身に塗ることでとても肌がつるつるになるとか。
尿素
尿素これはホームセンターで600g、150円でした。

 尿素はDIYショップで肥料用として安く買えるし、グリセリンも薬局やスーパーで、100ml入りが300〜400円で売っています。自作してこれを使い出したら、高額の市販化粧水が馬鹿らしくて買えなくなるそうです。尿素は、皮膚の角質層に働きかけて水分保持し、しっとり感を出したり、古い皮膚を取り除いてざらざら感をなくしたりします。 このように、尿素が皮膚に作用するという話は今から50年ほど前に分かってきました。 そして、皮膚が乾燥する時の治療薬として尿素を含む物が1977年に日本で発売されました。古くから知られていた尿素ですが、薬に使われるようになったのは割合最近です。

 尿素は水1mlに1g溶けますが、エーテルなど薬を作る時の溶媒には、ほとんど溶けません。そのため、薬品をうまく作ることができず、尿素だけが析出して皮膚を刺激するなど問題があったそうです。尿素は、無毒とはいわれていますが、濃度や体質によって皮膚を刺激することもあるので、化粧水を作られる方は注意が必要です。


尿素って何
 実はこの尿素、人類が初めて作ることができた有機物なのです。19世紀中頃まで有機物は、動植物がその体の中で作るだけで、人間が人工的につくることはできないと考えられていました。これを生気論(せいきろん)といい、当時の化学者達はこの説を受け入れていたのでした。 しかし、1828年にドイツの化学者ウェラーがシアン酸アンモニウムという無機物から、有機物である尿素を作り出しました。このことによって生気論が捨て去られることになり、現在、数え切れないほどのさまざまな有機物が作り出され、私たちの周りにあふれることになったのです。

  さて、人間がその手で初めて作った有機物「尿素」。しかし、健康な体の中では自然に作られます。私たちは生きていくために、いろいろな物を食べなければなりません。そして食べ物の中のタンパク質は、分解が始まると体の中でアンモニア(NH3)などを作りだします。そして、このアンモニアは、人体にとっては非常に有害な物です。そこで、通常は、尿素回路というアンモニアを尿素に変える反応が身体にあり、より毒性の低い尿素になるのです(下図参照)。ちなみに、大人は1日20〜30gの尿素を尿として排出するといわれています。



図.尿素回路:アンモニアに、CO2やATP(アデノシン三リン酸)が反応すると、カルバモイルリン酸という物ができ、これが尿素を作る回路に入る。食事で摂取した窒素で必要以上のものは、このサイクルで尿素に変化する。



 余談ですが、尿素で綺麗な結晶を作ることができます(下写真)。洗濯のり(PVA)を少量加えて尿素の飽和水溶液を作り、2日くらいそのまま放っていると写真のような状態になります。なかなか綺麗ですので一度お試しください。
また、作り方に関してはこちらのページもご覧ください

尿素の結晶。花状
尿素の花



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