金なくても暇があった大学に入った頃、自動車免許もないのにガソリンスタンドでバイトをしていた時期があります。
それまで、ガソリンスタンドには何の用もなかったので、立ち入る事もなかったのですが、そこでいろいろなお作法を習いました。その一つに地面は乾燥させず、できるだけ湿らせておくようにということがありました。それは、もし何らかの火が落ちてもすぐそれが消えるようにするためであったり、こぼれたガソリンなどを、流しやすくするためでした。大変危険なガソリンを扱うからだったのでしょう。
必ずしもガソリンスタンドの地面がすべて濡れているということもないのですが、私のバイトした所では、そういう掟でした。ここでは、薬(薬品)や毒(毒物)について話をしていますが、今回はガソリンなどを含む危険物というものについて解説していきましょう。
危険物とは?
危険物とは、火災、爆発を起こす物質で消防法によって以下の6種類に分類されています。なお、消防法での危険物は固体と液体を対象にしており、気体については、高圧ガス取締法によって規制されています。
消防法上の分類 | 特徴 | 代表的な物質 |
第1類 酸化性固体 |
酸素を出して可燃物と反応し、火災 爆発を起こす固体 |
次亜塩素酸、さらし粉、塩素酸塩等 |
第2類 可燃性固体 |
低温で引火、着火しやすい固体 | 赤りん、鉄粉、アルミニウム粉等 |
第3類 自然発火性 及び禁水性物質 |
空気または、水と反応して発火する物質 | 金属Na,Li, アルキルAl等 |
第4類 引火性液体 |
引火しやすい物質 | エーテル、ガソリン、灯油等 |
第5類 自己反応性物質 |
熱や衝撃で着火、燃焼、爆発を起こす物質 | 硝酸エステル、ニトロ化合物 |
第6類 酸化性液体 |
可燃物と反応して、その燃焼を促進する液体 | 過塩素、過酸化水素、フッ化塩素等 |
これらの中から、私達の身の周りで関係のありそうなものを見てみましょう。
【第2類可燃性固体】
表中に鉄粉と書いてありますが、これのどこが危険なのかと思われる方もいるでしょう。私も、ある実験を見るまでは、知らなかったのですが、非常に目の細かい鉄粉は空気中で発火する事があります。鉄粉を発火させるといっても特別な事をするわけではなく、容器に入れた鉄粉を頭くらいの高さからパラパラと落としていくと空気中の酸素と急激に反応し発火するのです。
【第3類自然発火性物質および禁水性物質】
ここで有名なものは学校の実験で使われるNaやKでしょう。皆さんは中学・高校の化学実験でNaを水に浸ける実験をしたことがないでしょうか。Naは水と反応すると水素と高い熱を発生し、場合によってはその熱で水素が爆発する事があります。Naなどは、オイルや灯油中に保管するようになっています。
【第4類引火性液体】
引火性のある液体で、引火性の強さでここに含まれる物質は7種類に分類されています。最も引火性の高い特殊引火物は、1気圧で引火点が−20℃以下、発火点が100℃以下、沸点が40℃以下のものと決められています。身近にあるものではありませんが、実験室でよく扱うジエチルエーテル、CS2といったものは要注意物質です。これら物質から数m離れた場所で火を使っていても、蒸気を伝って火が付くし、実際に火事などになっている事もあります。
その次に引火性の高い物質は第1類石油類と呼ばれ、引火点が21℃未満のものとして分類されており、ガソリンなどが含まれています。 それから第2石油類。これらは、引火点が21〜70℃のもので引火する物質が含まれます。例えば、冬場よく使われる灯油はここに含まれます。 これらも危険物? なお、引火点とは物質を徐々に加熱して温度を上げ、時々、火をその表面近くに持っていった場合にその物質が燃えだす時の温度を指します。ですから、通常の温度ではガソリンなどは、加温せずとも火が近くにあればあっという間に燃え出すとうことになります。また発火点というのは、その物質を徐々に加熱していった場合に、ひとりでに燃え出すときの温度をいいます。 他にも、動植物油脂という分類もあり、オリーブ油やヒマシ油、ゴマ油といったものも危険物に分類されています。
もちろんこれらの物質は、家庭で使うような分量では、消防法上問題はありません。もちろん、取扱いに注意は必要ですが。
危険物は、量的に多くならなければ特に取り扱うのに免許は要りませんが、ある程度の量以上になると製造、販売、取扱い、貯蔵などを規制するため危険物取扱者免許が必要になります。私はまだ持っていませんが、いずれ、試験を受けて取得しようかなとも考えています。
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