アクチニウム(Ac)
周期表には、アクチノイドと呼ばれる89〜103までの15の元素がひとつにまとめられた一群があります。以前紹介したランタノイドと同じように周期表本島から離れた小島として示されています。少し前の周期表では、アクチノイドの最後の元素で周期表が終わっていました。ちなみにアクチノイドに属する元素は放射性元素で、科学館の周期表にも実物がありません。

  さて、今回は、このアクチノイド系列の最初の元素アクチニウム(Ac)についてです。 アクチニウムは1899年、ドビエルヌという25才の若いフランス人化学者によって発見されました。ドビエルヌは、キュリー夫妻と親しく、彼らがポロニウムやラジウムを分離した鉱石、ピッチブレンド(閃ウラン鉱)の溶液に水酸化アンモニウムを加え、希土類を沈殿させました。すると、そこに別の放射性元素があることに気づいたのです。これは、キュリー夫妻がポロニウムとラジウムを発見した翌年のことです。  
 
 ドビエルヌは、ギリシア語で放射線とか光の意味を持つaktisからアクチニウムと名前をつけました。また、彼とは別にギーゼルという科学者が1902年にエマニウムという元素を発見したと発表しましたが、後にこれがAcであることがわかりました。 自然界に存在するAcは原子量が227と228のものがあります。どちらのAcも、徐々にα線やβ線を出しながら、原子量が207と208の鉛になって落ち着きます。この変化を壊変と言います。227Acは、そこにあった量の半分が鉛に変化するまでに、約21年かかります。

 この間にラドンやポロニウムなどといった放射性元素を出しながら鉛に落ち着いていくのです。 さて、鉱石から取り出すときにランタンとの分離が難しいことや放射能の強さなどから化学的な性質もよくわかっていませんでしたが、1949年にある会社がAcを工業的に生産できるようにしたことや、原子炉で227Acが得られるようになったことで少しずつ化学的な性質もわかりつつあります。ちなみにAcはやわらかい銀白色の金属で、暗い中でも青く発光しています。強いα線源になりますがその放射能の強さからほとんど用途がありません。

(うちゅう2003年2月号より)


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