不況の底は脱した(?)といわれていますが、なかなかそう思えない人も多いのではないでしょうか。そんな中でも売り上げが伸びているパソコン。次から次へとニューモデルを発売しては、あっという間にオールドモデルの山が作られていきます。さて、そのパソコンの命といえばCPUやDRAMなどの集積回路(IC)ですね。この集積回路を作っているのはケイ素を中心とした半導体ですが、最近は、より高速の情報処理を行う事のできるガリウム−ヒ素半導体(ヒ化ガリウム:GaAs)が多く使われるようになってきました。この半導体は他に、赤色発光ダイオードの材料やCDプレーヤーのレーザー光を作るために使われています。

今回はこのヒ素(As)の話です。Asというと毒というイメージが強く、実際古くからそのように使われてきたことも少なからずあります。しかし、上記のように私達の暮らしにおいても重要な元素として働いているのです。Asの英語名arsenicはギリシャ語の顔料、雄石を指すarseniconに由来するといわれています。Asは天然に単体で産出することもありますが、雄黄(As2S4)や硫砒鉄鉱(FeAsS)などといった硫化物として産出することが多く、ヒ素化合物はギリシャ時代から知られていました。そのため、誰が発見したということは分かっていません。しかし、Asを単離したと考えられているのは、13世紀のドイツのスコラ学者、A.マグヌスといわれています。彼は、雄黄と石鹸を反応させて、As単体を取り出したとされています。

そして、Asが銅を白く着色すると銀のようになることが、錬金術師達に「錬金術は存在する」ということの拠り所になっていました。 Asは、原子量74.9、常圧では615℃で昇華し、そのとき三酸化二ヒ素(As2O3)が生じます。アメリカはAsの主要な産出国でしたが、現在は生産しておらず、米国内で使用されるAsはすべて輸入されています。そのAs量は3万トンにもなります。そしてその6割が木材の保存剤として使われています。 さて、Asを使った半導体は、従来のものより非常に高速処理に優れており、NTTの日本からアメリカへのネット通信回路に使われている集積回路には全てヒ化ガリウム半導体が使われているそうです。




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