ホウ素(B)
 
  いきなりですが、皆さんはゴキブリを退治するときに、何を使われていますか?いろいろな製品が出ていますが、古くから使われているのがホウ酸ダンゴ。これは、ゴキブリだけでなく、ネズミ退治にも効くのですね。 では、ホウ酸ダンゴの何がゴキブリに効くのかというと、今回の主役であるホウ素(B)によるのです。

  Bは、古くからほう砂やウレックサイトという化合物の状態で取り出されて、利用されていました。単体自体は、19世紀のイギリスの化学者H.デーヴィーが発見しました。彼が、大きな電池を開発して物質の電気分解法が行えるようになり、その方法を用いて1808年、ホウ酸溶液からBを取り出しました。ただしあまり純粋なものではなかったようです。

ウレックサイトNaCa[B5O6(OH)6]・5H2O 浮き
上って見えますか?


 Bは、はじめほう砂(borax)にちなんでboraciumと呼ばれていました。しかし、炭素(carbon)にも性質が似ているということで、boronという名前に落ち着きました。 このBの、基本性質ですが、原子量10.8、密度が2.34g/cm3、融点が2092℃、沸点4000℃の非金属の元素です。 はじめにBはウレックサイトなどとして取り出されると書きましたが、この石は別名テレビ石とも呼ばれています。科学館の展示場にも置いておりますが、特徴として石の下においてある文字などを浮き上がらせてみせます。

 面白いところでは、植物の成長にもBが欠かせません。Bは植物の細胞壁に分布して細胞壁のペクチン質を橋渡しして結合しています。そのため、B欠乏で成長が止まってしまうそうです。また、細胞分裂や花粉の受精を助ける働きも持っています。
 さて、ゴキブリのホウ酸ダンゴが効く理由ですが、Bによって、体の中の酵素の働きを止めてしまい、脱水させて殺します。効き目は遅くて4〜5日程度かかるようですが確実に殺すことができます。 他にもBそのものの低密度、高融点などの特徴を生かし、チタン、ジルコニウム、クロムなどの金属と合金を作ることで、ジェットタービンの翼やロケットのノズル、スペースシャトルの材料に使われます。ゴキブリ退治からスペースシャトルまで…。Bはあちこちで活躍していますね。

(うちゅう2002年6月号より、一部改編)


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