身の回りにありふれている鉄(Fe)。純粋な単体としての使用はあまりありませんが、炭素やNi、Coなどといったさまざまな金属を混ぜて「鋼」として私達の周りで使われています。そして、あまりにも私達の生活に入り込んでいるが故、意識されることもありませんが、遠い昔においては、青銅器文化終焉の幕引きを担うなど、人類の歴史の中で表舞台に出てくることがあったのも皆さんはご存知でしょう。

 では、このFeはいつ頃から使われていたかというと、紀元前5000年前頃にはイラン等で使われていたようで、遺物も出土しています。Feを手にするようになった国家は巨大な勢力を持つようになりました。そしてFeを作ることのできる鍛冶屋も高い社会的地位を得ていたことが多いようです。英語でFeはironといいますが、これはケルト民族の古い言葉で「聖なる金属」を意味する言葉からきています。また、元素記号はFeですが、これは、ラテン語で鉄を意味するferrumに由来しています。  さて、Feの性質ですが、原子量55.84、密度7.87g/cm3、融点1535℃、沸点2862℃を示し、展性、延性に富む純白色の金属です。通常は+2と+3の酸化数変化でいろいろな化合物を作ることが多いです。

 私達の体でもこのFeの酸化数の変化がないと生きていけない現象があります。それは血液中のヘモグロビンの作用です。赤血球中のヘモグロビンを作るヘムは、Feの+2価を中心に据えたタンパク質です。そしてFeが酸素と結合するとが+3価になります。このヘモグロビン中のFeと結合した酸素が体中に運ばれ、各細胞に必要な酸素を供給することになるのです。

 血液中にFeが含まれていると分かったのは1745年のことでした。イタリア・ポローニャ大学のメンギーニという医者が犬の血液を燃やしてその灰のなかの粒子に、磁化したナイフにくっつくものが出てきたことからFeの存在が分かったのです。それから血液中のFeによって起る有名な反応があります。それは、ルミノール反応。Fe−ルミノール−過酸化水素水で青白い光を出すのです。物騒ですが、警察では事故・事件等の時に血痕を探すのにルミノールを使う事もあるそうです。


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