あの阪神淡路大震災のとき、科学館でも展示場にいろいろと被害を受けました。展示場4階にある展示「いろいろな元素」もほとんどの元素が、棚から落ちていました。そして液体状の金属が入っているビンがひび割れていたのを見つけたとき、「水銀がもれている!」と、私は非常にあせりました。しかしよく見ると水銀とは少し違ったようすで一部は固まっています。何だろうと見てみると、それはガリウム(Ga)でした。

Gaは水銀以外では唯一常温で液体となる金属です。原子量69.23、融点は29.8℃で、沸点が2400℃と液体状でいられる温度範囲が非常に広くなっており、純粋なものは青みがかった銀色をしていています。さらに、ガラスを"ぬらす"性質があり、ぬれた部分は鏡のようになってしまうため、ガラスの容器には入れない方が良いとされています。Gaは、前回紹介したAsと化合物を作って半導体として多く使われています。アメリカでは、消費されるGaの95%がGaAsとして発光ダイオード、太陽電池などに使われています。 また、バナジウムやタンタルといった元素と化合物を作ると超伝導物質となることが知られており、超伝導磁石の製作などにも使われます。市場での価格はこれまで紹介してきた金属に比べると非常に高く、1Kgあたり425ドル(1997年当時)となっています。

さて、Gaは、1875年にフランスの科学者ボアボードランが閃亜鉛鉱(硫化亜鉛:ZnS)を精製して得られた物質をスペクトル分析にかけたところ、それが新しい元素であることを発見したのです。彼は、この元素にラテン語でフランスを意味するGalliaからGalliumと名付けました。 またボアボードランのミドルネーム(?)はLecoqといいますが、このラテン語訳がGallusといい、もしかしたら自分の名前の意味もつけようとしていたのかも知れません。 そして、このGaはメンデレーエフが周期表を発表した当時まだ発見されていない元素で、いずれ分光分析により発見されるであろうと予想していた元素でもあります。「エカアルミニウム」それがメンデレーエフが予言していたGaの呼び名でした。



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