弾丸より速く、機関車より強く、高いビルもひとっ飛び!あれを見ろ!鳥だ!飛行機だ!スーパーマンだ!」のスーパーマンである新聞記者クラーク・ケントは、事件が起こると電話ボックスの中で着替え(?)て、飛び出していきましね。このスーパーマンの故郷がクリプトン星。どんな星かというエピソードは、映画の1作目で少し説明があった気がするのですが…。

 さて、今回は、スーパーマンの故郷の名前にもなったクリプトン(Kr)という元素についてです。KrはArやNeなどと同じ不活性ガスの1つです。空気中に約1.14ppm存在し、発見された時も空気から分離しています。発見者は、前回も登場したラムゼーとトラヴァースです。彼らは、HeとArの原子量からその中間の原子量を持つ元素と、Arより重い原子量をもつ元素があるに違いないと予想をたて、液体空気の分留を行いました。その結果、Arより重いKrを始めに発見したのでした。1898年5月の事です。そしてその後1ヶ月も立たないうちにNeを見つけました。名前の由来は、ギリシア語の「隠 されたもの」という意味をもつ kryptosから命名されています。 それにしても、今から100年ほど前に空気中にわずか1.14ppmしかないKrを分離したラムゼーとトラヴァースの緻密さと根気強さには驚かされます。

  さて、Krの性質ですが融点−157.2℃、沸点−153.3℃と融点と沸点の温度差がかなり小さい、原子量83.80の無色無臭の気体です。 Krは、1mの定義に用いられた事があります。それは、Krのスペクトルの一つが真空中における波長の1650763.73倍に等しい長さを1mとするとしたものです。1983年までこの定義が採用されていましたが、現在は、光の波長の約3億分の1秒間に進む距離が1mとなっています。また、Krには厄介な同位体85Krがあります。これは放射性物質で、核爆発や原子力発電によって生じる気体で大気中に漏れやすく、半減期も約11年と長いため大気中に蓄積されます。現在は問題のないレベルだといわれていますが、今後その取扱いが重要な問題になっていくのではないでしょうか。


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