「それでは、ナイフで切り取ったナトリウムをろ紙の上においてください。」私が高校2年生の時の化学の授業での1コマ。米粒大のNaの粒は、濡れたろ紙の上をねずみ花火のように、シューシュー音をたてながら激しく動き回りました。ろ紙にはフェノールフタレインをつけていたので、見る見る赤くなっていきます。「う〜ん、何て激しい反応を起すやつ…。」と感動しました。

Naは水と激しく反応し、水素を発生させ、爆発する危険性もあります。大きな金属Naをプールに投げ込み、大爆発を起こす実験を見せる先生もいると聞きますが、これは非常に危険です。飛び散る水は、水酸化ナトリウム溶液になっており皮膚を侵すだけでなく、目に入ると失明の危険性もあります。空気中でもNaは、徐々に酸化されていくので、石油などに浸けて保存します。 さて、このNaは、1807年イギリスのH.デービー(M..ファラデーの師匠)がNaOHから単離することに成功しました。Naは金属ですが、水に浮くほど比重が軽く(0.97g/cm)、金属光沢もすぐ消えてしまうため、デービーは、Naが本当に金属なのか最初疑問に思っていたようです。 Naは、非常に反応性に富んでいるため、天然では単体で存在できず、一価の化合物として存在しています。Naを含む重要な化合物として塩化ナトリウム「塩」がありますが、海には、約2〜3%の濃度で含まれています。また、イスラエル、ヨルダン国境にまたがる死海では、20%の濃度になるそうです。それから、私たちの生活に欠かせない、ガラスを作る時の原料としても塩は必要です。そして、4000年前のエジプトでは、すでに炭酸Naと石や貝殻を混ぜたガラスを作っていたそうです。

また、食塩として体内に取り込まれたNaは、細胞の組織液の浸透圧維持、pHの調整、神経伝達といった生命の維持には欠かせないものになっています。しかし、塩分の取りすぎがいけないのは、今更書くこともないことです。その予防の意味で厚生省は、一日の摂取量を10g以下、WHOは5g以下が適当と指導しています。

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