ネオジム(Nd)
 
  科学館で行っているサイエンスショーで、世界で一番強い磁石を使ってたことがあります。(株)住友特殊金属で開発されたNEOMAXと呼ばれるその磁石は、約15cm角のブロックです。ここにハンマーくっつけると大人の人でもはずすのは一苦労です。  
 この磁石は、普通に安く手に入るフェライト磁石とは、作られている材料が違います。ネオジム(Nd)とFeとホウ素を使って焼き固められたものです。さて、今回はこの磁石の主成分である、Ndについてのお話です。

   世界最強ネオジム磁石   くっつくと取るのが大変

Ndは、ランタノイド系の希土類元素に分類され、融点1,024℃、沸点3,027℃、密度7.003g/cm3の銀白色の金属です。そして、空気中においておくと少しずつ表面が酸素と反応して、Nd2O3という酸化物を作ります。この酸化物の色は、人工的に始めて作られた色素の名前に由来する、モーブ色と呼ばれるきれいな紫色を呈します。 Ndの発見は1885年、オーストリアの化学者ヴェルスバッハが当時ジジミウムと呼ばれていた鉱石からNdの酸化物を取り出したことによります。名前は、ジジミウムから新しい(ネオ)ものが発見されたということで、ネオジミアと名づけられ、ここから「ネオジム」となりました。Nd自体は、磁石をはじめとして、レーザーの発光器やガラスの色づけ、鉄鋼の添加剤などとして使われます。 強力なNd磁石は、いろいろなところで使われるようになりました。例えば、お医者さんが患者さんの体の中を診断するためのMRI(磁気共鳴画像診断装置)に使われたり、パソコンのハードディスク装置に使われて、アクセス時間をそれまでの1/3〜1/5にすることができるようになりました。

 さて、今を去ること数年前、サイエンスショーで別のNd磁石を使う実験をしていました。白衣のポケットにかぎ束を入れている私は、そのかぎ束にNd磁石をつけたのです。しかし、その下のズボンのポケットには懐中時計が…。そうとは気づかず、サイエンスショーをはじめるまでくっつけていたのです。気づいたときには時計は磁化してしまい、高い料金で磁力を消してもらわなければなりませんでした。

(うちゅう2002年5月号より、一部改編)


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