2001年のノーベル化学賞は「不斉触媒による、不斉合成の研究」で、名古屋大学の野依教授が受賞しました。このとき、他にアメリカの2名の方が受賞しましたが、名前は覚えていらっしゃいますか。どうも日本人のことしか頭に入りませんよね。同時に受賞したのはノーレス氏とシャープレス氏です。その、シャープレス氏は今回の受賞とは別にオスミウム(Os)を使った反応についての大きな業績があります。 それは、酸化オスミウム(OsO4)というOs化合物を触媒として、有機化合物のアルケンと呼ばれる種類の化合物をアルコールにする反応に成功したことです。これは、有機化学では、欠かすことのできない反応のひとつになり、天然物でしかできなかった物質を石油から作り出すことができるようになりました。そして、この反応によって現在さまざまな医薬品の製造に使われています。
  オスミウム
 さて、今回のテーマのOsは、Irを発見したイギリス人、S.テナントが1803年に発見しました。テナントは白金鉱からIrとOsを分離したのです。そして、OsO4が発する刺激臭からギリシャ語「におい」に対応する言葉、osmeにちなんでオスミウムと命名しました。ちなみにこのOsO4は、Os化合物を作るうえで大切な物質なのですが、猛毒でほんの少しの量を吸い込んでも気管支炎や肺炎を起こす厄介な物質です。 さて、Os単体の性質を見てみると、融点3045℃、沸点5000℃、密度は、22.57g/cm3 でIrについで、全元素中第2位の密度を誇ります。写真ではわかりにくいですが、濃い灰色をした金属です。Osの用途はあまりありませんが、前述した化学実験での触媒、電子顕微鏡で物を見る時などに使用します。

 さらに、身近なところでは万年筆のペン先に利用さます。Os、Ir、Ptルテニウム混ぜて作ったペン先は非常に固く、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持っています。メーカーによると、このペン先を使うと500万文字書けるとのこと。実際に書いたのか知りませんが、直線を描いていくと60km近くも線を引けるとか…。ステンレスのペン先よりはるかに持ちがいいそうです。

(うちゅう2002年2月号より)


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