エゾシカというとかわいい動物というイメージが私にはありますが、北海道で農林産業に携わっている人々にとっては厄介な動物のようです。というのも、エゾシカによる農林産物の被害というのが年間40億円以上にのぼるためです。そこで、エゾシカを駆除するためにシカ猟が行われますが、そこに使われるのは鉛弾です。そして、その撃たれたシカの肉を食べた稀少種であるオオワシやオジロワシに鉛中毒が発生しており問題になっています。このような事態を憂慮して、銅弾の使用を北海道の斜里町などでは進めているそうですが、弾の命中精度や流通経路の問題などでなかなか進まないそうです。
今回は、鉛毒などでも有名な鉛(Pb)についてのお話です。Pbは非常に古くから使われていた金属で、5000年前のものではないかという鋳造品や、古代エジプトの装飾品等が見つかっています。また、ローマの遺跡から現在でも使える水道管が発見されているのは有名な話です。そして、ローマ帝国が滅んだ一因もこの鉛の水道管から出た鉛中毒が原因ではないかという説もあります。 Pbは、原子量207.2の炭素元素族中最も重い元素で、密度11.34g/cm3、融点327℃、また非常に柔らかい金属です。Pbの英語名はleadですが、元素記号はラテン語の鉛をさす、plumbumに由来します。Pbの水道管は古代ローマだけでなく、日本でも最近まで使われていました。

それは、Pbが加工しやすく、また表面に酸化皮膜ができるため化学的に安定だからです。ただし、分析技術が上がってくると、水道水中にもPbイオンが検出されるようになり、Pbの水道管は使用に適さないということで現在はステンレスや合成樹脂などが使われるようになっています。Pbは純水中では溶ける事はありませんが、そこに酸素や二酸化炭素が存在するとPb(HCO3)2という重炭酸塩を作り、水に溶け出すそうです。 しかし、実際の水中には、重炭酸カルシウムや硫酸カルシウムが存在し、難溶性の塩基性炭酸塩等の皮膜を作るのですが…。 現在、Pbは蓄電池に最も多く使われ、他に顔料や、放射線防御や光学機器の鉛ガラスといったものに使われています。



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