ポロニウム(Po)

皆さんは、周期表を考えたメンデレーエフとキュリー夫妻が関係している元素があることをご存知でしょうか。それが今回紹介するポロニウム(Po)なのです。メンデレーエフが1869年に周期表を発表したとき、エカホウ素、エカケイ素などといったものを未知の元素として予言しています。
 さらにその後、酸素やイオウなどと同じ族で質量数が約212のドゥビテルルという元素があるかもしれないと予言しています。

 マリー・キュリーは、その事を知っていたのかどうか知りませんが、ウラン鉱物には未知の元素があるに違いないということで、懸命に研究を重ねていました。それは、人工的に作られたウラン化合物は放射線量がウランの量に比例しているにも関わらず、天然のウラン鉱物中からでる放射線量が、鉱物中のウランの量に対し、とても多いということが気になったためです。この研究をするためには大量のウラン鉱石が必要でしたが、ボヘミアの鉱山から産出するものをウィーン科学アカデミーを通じて数トンも手に入れたのでした。そして、ピエールと協力してこれらを化学処理し、1898年、その原因となっていた放射性物質を抽出することができました。その最初の物質がPoで、次いで発見されたのがRaです。

  Poの性質は、融点254℃、沸点962℃で密度が9.3g/cm3の銀色の柔らかい金属です。質量は210で、メンデレーエフが予言していたものに非常に近く、周期表上の位置的にもほぼ当たっていたことになります。また、この族中で唯一金属の性質を持っています。天然にはどのくらい存在するのかはっきり分かっていませんが、ごく僅かな量しかないため、通常はビスマスに中性子を照射して生じるビスマスの壊変生成物として作られ、α線源に用いられたり、過去には一部の核弾頭の中性子源にもなったそうです。化学的には、Poは塩酸に溶けやすく、2価のイオンになるとピンク色を呈し、さらに酸化されて黄色のPo4+になります。また、標準電極電位差は約−0.9Vで銀よりもイオン化傾向が小さく、ビスマスの溶液の中に銀を入れるとその表面にPoが析出してきます。 それから、Poという名前はマリーの母国であるポーランドにちなんでいます。

(うちゅう2000年2月号より)


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