世界で最も有名な女性の科学者といえば皆さんは誰を思い浮べるでしょうか。マリー・キュリー。私は、この人が最たる人ではないかと思うのですが…。何といっても物理と化学のノーベル賞を受賞した人です。そして、マリーの娘、イレーヌもノーベル化学賞を受賞しています。さて、マリーは2つの元素を発見しており、その一つが今回紹介するラジウム(Ra)です。

 1898年夫ピエール・キュリーとともに粗末な実験室で4年近くの共同研究の末、Raを見つけたのです。そのRaは、ウラン鉱石中には必ず存在する物質で、3kgのウランに約1mgのRaを伴うといわれています。そして、その最大の特徴は放射能を持つことです。また、半減期の一番長いものは226Raで1600年です。周期表上ではアルカリ土類金属に分類されており、密度は5.0g/cm3で融点は、700℃とも960℃とも報告されていて、沸点は1140℃となっています。

 名前は、ラテン語のradius(光を放つもの)に由来します。 Raの強い放射能を利用して以前は癌治療等の医療に使われていたことがありました。しかし、Raには前回紹介したRnを放出する厄介な性質があるため、現在は60Coなど人工の放射性元素に取って代わられています。またRaが発するりん光を利用して夜光塗料にも使われていたこともあります。キュリーが夜に実験室に行くとRaの触れた実験器具が青緑色の光を発していたのを見て、後に「輝く試験管は、かすかなおとぎ話の光のようだった。」と記しています。

 始めにキュリー夫妻がRaを発見した実験室は粗末と書きましたが、その場所を訪れた化学者オストワルドの言葉を最後に紹介しましょう。「熱心に依頼して、私はラジウムの発見直後にキュリーの実験室を見せてもらった。キュリー夫妻は旅行中であった。それは、馬小屋とジャガイモ倉庫の間にあって、もしそこに化学実験器具を備えた実験台がなかったら、私はそれを冗談だと思ったことだろう。」
「元素発見の歴史3」ウィークス/レスター著 大沼正則監訳より引用



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