1995年1月17日に神戸を中心に大きな被害を出した阪神淡路大地震。この時大気中に存在する、ある元素の濃度が高くなったというレポートを聞いた事があります。それが今回紹介するラドン(Rn)です。Rnは地下水中に含まれており地震前の地殻変動によって放出され、大気中の濃度が高くなるという性質を利用して地震の予知に使えるのではないかと注目されている物質です。現在でも発生の危険を指摘されている東海地震の予知のために藤枝市や伊東市などではラドンの濃度を計測しています。

 さて、Rnは電子軌道が満たされている不活性ガスで、他の元素とほとんど反応しません。それでもXeよりイオン化傾向が小さいため、Xeと同じようにフッ素との化合物を作るのではないかと考えられています。しかし、Rnの放射能の危険が大きく実験が難しいうえ、放射性分解が激しいので生成した化合物の確認も難しい状況です。 Rnはすべて放射性物質で、この性質が発見される原因になっています。

 最初にRnの存在に気づいたのはキュリー夫妻です。彼らが放射性元素のポロジウムとラジウムを発見した時にラジウムに触れていた空気も放射能を持つ事に気づきました。その後、ドイツのドルンがラジウムが崩壊する事によって発生するガスが放射能を持つためである事を発見しました。そして、ラザフォードらによって希ガスである事が分かりました。名前はラジウムにちなんでいます。

 Rnの基本的なデータとしては、質量数が199〜226まで約30種類の同位体存在しており、原子量222、融点−71℃、沸点−62℃となっています。 空気中に存在している事は前述しましたが、アメリカなどでは、家屋内のRnの濃度が健康上問題になるほど高い地域があるそうです。 さて、これにて周期表上の18族、不活性ガスについては解説が終了しました。以前述べたように、この属は周期表の発見者メンデレーエフが予言できなかった属ですが、その多くが、ラムゼーやトラヴァース等の熱心な研究と努力によって発見されたものです。彼らはある意味周期表の影の立役者とも言えるのではないでしょうか。



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