「う〜ん、どうもきれいに光ってくれないなあ…。」数年前、サイエンスショーの製作担当になり、その予備実験中での、私のボヤキです。試験管の中で塩素酸カリウムを融解させ、割りばしを入れると爆発に似た現象がおき、その時の熱を利用して炎色反応を見てもらうという実験を行うための予備実験中のことです。銅や、ナトリウム、リチウムなどを使ってきれいな光を見てもらおうと思ったのですが、今ひとつ、きれいな発光が見られませんでした。「そういえば、ストロンチウム(Sr)まだ使ってなかったよなあ。」と、しばし、塩化ストロンチウムの試薬ビンとにらめっこ。うまく発光してくれと祈りつつ、実験をすると、とても綺麗な赤色の発光がありました。

 Srは、加熱して励起すると基底状態に戻る時にきれいな赤色(606nm)を放出します。この赤色は、皆さん一度は見たことがあるはずです。花火で赤い色を作る時にこのSrを使用していますから。 さて、このSrは、今から約200年前、スコットランドのストロンチアンというところの鉛鉱山から発見されたストロンチウム石に含まれていることにA.クロフォードという化学者が気づきました。その後、元素の単離は、1808年にH.デービィーが電解法によって成功しています。元素名は、鉱物名からそのままつけられました。 Srの性質としては、単体を細かくしておくと、空気中で自然発火することもあります。

 また、炭酸塩は、カラーブラウン管用ガラスに使われます。クロムとの化合物は、古くから絵の具として使われていましたが、最近、錆止め顔料として注目されています。 同位体の90Srは、核爆発で生成され、半減期29年でβ崩壊していきます。この同位体が体内に入ると、Srは、同じアルカリ土類金属に属するカルシウムに性質が似ているために、骨などに集まり、長期に渡って、造血作用を冒します。ちょっと怖い話で終わってすみません。

(うちゅう1998年11月号より)


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