1801年メキシコの鉱山学者、A.M・デル・リオがクロムとウランに似た新金属を発見したという報告をしました。デル・リオは、メキシコでは、非常に有名な化学者です。彼が、フランスで研究していた頃、ちょうどフランス革命が起こりました。その革命によって命を絶たれた化学者、ラボアジェとも交流があったため、命をねらわれたこともあります。命からがらフランスから戻ったデル・リオは、先に述べたように、1801年に褐色の鉛の標本を調べていたところ、新元素が含まれていること発見したのです。彼は、その塩が、加熱したり、酸と反応させると赤くなることから、ギリシャ語で赤色を示す「エリスロニウム」と名付けました。しかし、ある学者から、それは、同時期に発見されたクロムではないのかとの指摘を受け、また、その性質もよく似ているため、デル・リオは自身をなくし、この報告を撤回してしまいました。

 そして、もう一人、有機化学の分野で忘れることのできない、F.ウェーラーもバナジウム(V)を、もう少しのところで発見することができませんでした。結局、Vという新元素を明確にしたのは、スウェーデンの鉄鉱石を調べていたセブストレームという化学者で、彼が、バナジウムと命名しています。1830年のことでした。現在、発見者は本によって、デル・リオとセブストレームに別れています。個人的には、デル・リオが先ではないかと考えていますが…。

 さて、著名な学者達を悩ませたVとは、いったいどのような性質を持っているのでしょうか。Vは遷移金属に属し、1915℃の融点は第3属元素としては最も高いものになります。 また、地殻中を構成する元素のうち、160ppmがVで、カルノー石、パトロン石などとして産出されます。また、一部の地域の石油にも含まれています。Vの用途としては、バナジウム鋼として製造され、工具、バネなどとして使われています。また、面白いところでは、ホヤの血液を構成する細胞に1900〜14000ppm含まれており、どのような作用を及ぼしているのか研究されています。

(うちゅう1999年1月号より)


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