以前、サイエンスショーでは、綺麗な虹(スペクトル)を観察する実験を行っていました。実験では白熱電球の光を目の細かいアクリルビーズを敷き詰めたボードに照らすと虹を観察することができたのですが、この光源、白熱電球を普及したエジソンはフィラメントに炭化させた竹を使っていのは、皆さんご存知のことと思います。

 現在は、タングステン(W)を使っていますが、Wを電球のフィラメントに使う理由はというと、融点約3380℃、沸点約5500℃と非常に高いからです。ダイヤモンドの融点が約4800℃といわれていますが、これはやや特殊なものですから、融点は全元素中最も高いものといえます。また細く加工する事ができる性質もあるので産出量の半分は電球のフィラメントととして使われるのです。普通の白熱電球にはN2、アルゴンといった不活性ガスを入れて使用します。さらに、微量のハロゲンを封入すると、蒸発したWがハロゲンによって再びフィラメントに戻ってくるというサイクルができ、より明るく、長寿命になるハロゲンランプとうものが出来上がります。

 さて、このWですが、Snに関係が深い物質です。Snを精練する際にSnの鉱石と、Wを含んだ鉱石、鉄マンガン重石(FeMnWO4独語名wolframite)が混ざっているとSnがきちんと精練できなくなり、鉱夫たちは、「狼がSnを食う」と嫌っていたそうです。これが現在のタングステンの元素記号「W」のもとになっています。

 では現在のタングステンという名前ですが、これは、酸素発見者でもあるスウェーデンの化学者シェーレが、当時スウェーデン語で重い石を意味するtungstenという鉱石を調べて、Wの酸化物を分離した事に由来します。ただ残念ながら、彼はそれが何か未知の物質であるということまでしか分かりませんでした。Wを発見、単離したのはスペインのデ・エルヤル兄弟で1783年の事になります。 Wは、フィラメント以外に、炭化タングステン(WC)を作るのに用いられ、非常に硬度が高くなり、切削工具材料や、機械材料として使われています。



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