最近、夜道を歩くとやけに青白くて明るいヘッドライトの車が目立つようになってきました。違法改造車か?と思っていたのですが、いわゆる高級車に多いので、新しいタイプのライトなのかなあとは気になっていました。で、とある雑誌を見ていたらこのライトの事が書かれていました。HIDランプといい、電球の中にフィラメントがなく、放電によってランプを点灯させるようになっているそうです。なお、このHIDランプに似せた色の光を出すフィラメントタイプのヘッドライトもあるそうですが、これはあまり明るくありません。

 さて、この放電タイプの電球にはキセノン(Xe)が封入されており、高電圧をかける事で発光させています。Xeが発する光(スペクトル)は紫外線の領域から赤外線の領域まで含まれており、白色光に近い色を出します。科学館のオムニマックスの映写機にも巨大なXeランプが使われており、あの巨大なドームに映像を映し出しています。

 さて、このXeの発見者はラムゼーとトラヴァースです。Neを発見した翌月1898年7月に発見しました。2人は、わずか3ヶ月の間に3つの元素を発見したのです。そしてこのXeも空気を液化したものから分離したのですが、Xeは、Krよりも更に量が少なく0.087ppmしか存在しないのですから、発見するに至るにはかなりの努力がいったはずです。ちなみにこのXeの名前はギリシャ語の「よそ者」「奇妙なもの」を意味するxenosから名付けられています。

 Xeの性質は、質量131.29、融点−111.8℃沸点−108.1℃、無色無臭の単原子分子です。以前、希ガスはほとんど化合物を作らない、という話をしましたが、実は、このXeによって希ガスにも化合物を作るものがあるということが分かったのです。1962年カナダのブリティッシュコロンビア大学のバートレットがXePtF6(ヘキサフルオロ白金酸キセノン)という初めての希ガス化合物を作る事に成功しました。これは、Xeのイオン化電位が他の希ガスに比べて少し低いためにできたのです。


周期表トップへ